三國書庫
□届かない華
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それは摘み取られてしまった華――。
自分以外の者に摘み取られてしまった華――。
それでも、自分を魅了してやまない華――。
執務室で一人、山積みにされた書簡を黙々と片付ける。ひたすら筆を走らせる、マンネリン化した動作。
「後、半分くらいか……」
筆を硯の上に置き、伸びをしながら視界におさめた書簡にごちる。
「馬岱殿」
戸を軽くノックをする音がした次に、心から愛でる華の声がする。
入室を促せば、流れるような長髪を揺らしながら入ってくる。
「お茶、煎れましたよ」
静かに湯呑を置くその動作さえも、愛しくてたまらない。
「大変ですね、孟起の分」
苦笑しながら山積みになった書簡に目を向ける趙雲。
どこか声が弾んで楽しそうだった。
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