三國書庫

□共有時間
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“いつまでも一緒に”


そう言える人を、一番近くで護り続けたい――。


ただそれが、一つの願い……。






パタパタパタ……。

昼にさしかかった時刻、馬超は小走りに回路を急いでいた。

「子龍っ!」

いつものように勢いよく扉を開け、またいつものように執務をこなしている趙雲は、少し呆れた顔をしている。

「もう、執務の方は――」「終わった。子龍に早く会いたいから!」

このセリフも毎度の事で、それをいつも同じタイミングで遮る。

「そんな事言って、また馬岱殿に頼んだじゃないの?」
「そんな事ないって。子龍は疑り深いなぁ」

馬超は心外だな。と、笑って付け加える。

趙雲は開いていた書簡やらを片付けて、馬超の隣へと移動した。

「お昼、食べに行きましょう?」

控えめに着物の裾をつかむ彼に、馬超は自身の体温が少し上がるのを止められずにいた。

趙雲もほんのりと頬が赤くなっているように見える。

「あ、うん。行こう、な」

なぜだか恥ずかしさが込み上げてくる。

それはまるで、初めて恋人ができた時のような感覚。

一つ一つの仕草が、言葉が、愛おしくてたまらない。
できる事なら、誰にも見せたくない。

「子龍」
「何?」

食堂へと続く回路を二人で並んで歩く。そこでふと立ち止まり、

「昼は後にしよう。先に子龍にみせたいものがあるんだ」
「孟起が私にですか?」

コクリと一回頷けば、趙雲が何かを考えているような顔をする。

大方、残りの執務の事を考えているのだろう。

本当に真面目な恋人だ。

「……いいですよ」

想像したとおりの返答に馬超は趙雲に笑い、彼もつられるようにして微笑む。

大好きな笑顔。理由なんていらないくらい、大好き。



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