大戦書庫
□思い出の空
1ページ/4ページ
この世で綺麗なものはいくらかある。
それを教えてくれた人は自分にとって大切な人。
その人はよく自分の事を『綺麗だよ』って優しく言ってくれた。
それがすごく嬉しかった。
でも恥ずかしかった。
はにかんで、頬を紅く染めて、
「そ、そんな事ないですっ///」
って抗議の声をあげた。
でもあの人は、そんな俺を見ながら、
「何?自覚してないの?あ!私を煽っているのか」
って、また笑いながら冗談と本気と判断がつかないような口ぶりをする。
俺は本当に恥ずかしいのに、あの方は楽しんでいる。
それが時々悔しかったりした。
だから少しだけ反抗してみようか、と思ったり。
でも、結局それはいつも無駄に終わる。
「子龍、反抗期かい?」
クスリと笑って、俺の髪にその綺麗な指を何回も通していく。
それがすごく気持ちよかった。
「ほらほら。気持ち良さそうな顔しちゃって」
「だって――」
だって本当に気持ちいいんだから仕方がない。
「殿に反抗なんてできません」
そうこの殿の前では俺が成す事はきっと無駄に終わってしまう。
「子龍は本当に正直だね」
そう言ってまた髪に指を通していくんだ。
殿はすごく優しい。
今でも初めて出会った時の事を覚えてる。
こんな事を言うのはガラじゃないけど……。
あの日の出来事っていうのは、昨日の事みたいに鮮明に覚えているんだ。
最初は大体、半信半疑なんだ。
なぜって?
だって自分の命をかける。
それって俺はすごく勇気がいる事なんだと思う。
だから、仕える君主ってのは重要。
殿は理想そのものだった。
寧ろ、理想以上だったって思える。
.