大戦書庫

□思い出の空
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この世で綺麗なものはいくらかある。

それを教えてくれた人は自分にとって大切な人。

その人はよく自分の事を『綺麗だよ』って優しく言ってくれた。

それがすごく嬉しかった。

でも恥ずかしかった。

はにかんで、頬を紅く染めて、

「そ、そんな事ないですっ///」

って抗議の声をあげた。

でもあの人は、そんな俺を見ながら、

「何?自覚してないの?あ!私を煽っているのか」

って、また笑いながら冗談と本気と判断がつかないような口ぶりをする。

俺は本当に恥ずかしいのに、あの方は楽しんでいる。

それが時々悔しかったりした。

だから少しだけ反抗してみようか、と思ったり。

でも、結局それはいつも無駄に終わる。

「子龍、反抗期かい?」

クスリと笑って、俺の髪にその綺麗な指を何回も通していく。

それがすごく気持ちよかった。

「ほらほら。気持ち良さそうな顔しちゃって」
「だって――」

だって本当に気持ちいいんだから仕方がない。

「殿に反抗なんてできません」

そうこの殿の前では俺が成す事はきっと無駄に終わってしまう。

「子龍は本当に正直だね」

そう言ってまた髪に指を通していくんだ。

殿はすごく優しい。

今でも初めて出会った時の事を覚えてる。

こんな事を言うのはガラじゃないけど……。

あの日の出来事っていうのは、昨日の事みたいに鮮明に覚えているんだ。

最初は大体、半信半疑なんだ。

なぜって?

だって自分の命をかける。

それって俺はすごく勇気がいる事なんだと思う。

だから、仕える君主ってのは重要。

殿は理想そのものだった。

寧ろ、理想以上だったって思える。




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