T

□底辺
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 とある日、僕は気分が優れなくて授業中に退室した。


 頭痛もするし、熱っぽい。

 どうも風邪を引いたみたいだ。



 一人で医務室に向かう途中、僕はとうとう吐き気に襲われて廊下で蹲ってしまった。
 こんな所で吐くわけにはいかないと、胃がムカムカするのを我慢して、身近なトイレを思い当たった。


 呼吸が短くなって、涙で目が霞んでくる。

 誰か先生でも通りがかってくれないかなぁ、なんて甘い考えが脳裏を過ぎった時。



 僕って運が悪いのかな…。



 彼女が通りがかってしまった。




「大丈夫?気分が悪いの?」


 僕の姿を認めたとき、彼女はすぐに駆け寄って僕の顔を覗き込んだ。

「だ、大丈夫…だ、か、ら…」

 本当はそんな筈無いけど、こんな情けない姿を見られたそう答えるしかない。
 でも目に見えて大丈夫じゃないのは、とっくに彼女に知られたことだ。

「吐きそうなんでしょう?トイレまで連れて行ってあげようか」

 とんでもない、と勢いよく顔を上げたのが悪かった。



 僕は頭から爪先まで、釘を打たれたかのような衝撃が走った。




「ああッ大変!」

 彼女は僕の背中を擦って、ハンカチを差し出した。



 彼女の前で吐いてしまうなんて。



 軽く死にたくなった。


 ていうか、既に羞恥心で死ぬかもしれない。






      
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