Novel〜短編〜

□・・・みたい
1ページ/6ページ

安っぽい事務椅子に背中をもたれさせ、

くすんだ白い天井を見上げる。

体中がだるい。


期末の採点で徹夜続きだったからなぁ…。


『ふぁ〜…ねむ〜…』

今回は簡単に作ったつもりだったんだけど


…何人再試に引っかかったことやら。


ぐっと伸びをしながら大きな欠伸を吐き出す。

すると唐突に背中を平手打ちされた。


予期せぬ衝撃で目の前に星が飛ぶ。


痛みで歪んだ顔のまま振り返ると、


同期で国語教諭の陽人が俺の顔をにやつきながら覗き込んできた。


「おいおい何だよ。

ついに彼女でもできたのか〜?」


朝っぱらから何バカな事を…。


徹夜の憂さ晴らしとさっきの仕返しに


陽人の顔をファイルで一発殴ると、


俺は採点済みの答案用紙を掲げて見せた。


『違う。ただの寝不足…ふあ〜ぁ…』


「〜〜〜〜っ、んだよ。

ついに春樹にも春が来たと思ったのによ」


『一年中、頭の中が春のお前と一緒にするなよ』

「ひどっ!お前冷めすぎだって!

女に興味ねぇの?!」


椅子から滑り落ちそうなほど体を乗り出して陽人が俺に顔を近づける。


俺はそれをファイルで押しのけながら、


出来るだけ感情のこもっていない声で返事をした。


『興味がないわけじゃ……ない、と思うけど…』

「…さっびしー。お前って数字が恋人?」

『ほっとけ』

そう言いながらもう一発陽人の顔を殴りつける。



   
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ