パンドラハーツ
□何して遊ぶ?
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兄さん。
僕の兄さん。
僕だけの可愛い兄さん。
「何して遊ぶ?」
ギルバートは暗闇から聞こえてきた声に身を震わせた。首輪から伸びた鎖がしゃらんと音を立てる。
「う゛ぃん、せんと・・・もう、やめるんだ」
部屋の明かりをつけ、ヴィンセントは小首をかしげた。
「何で?兄さん、僕と遊びたくないの?」
一日中暗闇の中にいたギルバートにとって部屋の明かりはまぶしすぎて、目を強く閉じた。
視力が戻った時、オッドアイがギルバートを見つめていた。
「兄さん、僕のことが嫌いになっちゃったの?」
「好きだとか嫌いだとか、そう言う、問題、じゃない」
途切れ途切れの声を聞きながら、ヴィンセントはギルバートに一昨日の夜から食事をあげていないことを思い出した。
そうか、兄さんはおなかがすいていたんだ
「ごめんね、兄さん。はい。ご飯」
ギルバートの口元に戸棚から出したパンを持って行く。
受け取ろうとあげた手を、ヴィンセントがはたいた。
「駄目だよ。僕が食べさせてあげるの」
ギルバートは食べることを諦め、口を閉じた。
「どうしたの?食べないの?」
「自分で食べられる」
ヴィンセントはパンをちぎると、ギルバートの唇につけた。
「はい、あーん」
「ヴィンスっ!ままごとも大概に・・・」
「そう。ままごとしてるの」
ふと真顔に戻ったヴィンセントにギルバートは悪寒を感じた。
「おままごと。今日は兄さんとおままごとするの。懐かしいよね。僕がお母さんで兄さんが息子」