デュラララ

□俺のもの
1ページ/4ページ

「ねぇ静ちゃん」

耳障りな声が聞こえた気がした。

「ねぇったらさ」
気温は初夏と言うこともあって、ぽかぽかと暖かい。この居眠り日和なら幻聴も聞こえちまうものなんだな。コンビニにでも寄って冷たい物でも買って帰ろうかと一瞬思案し、けれど頭を振って歩を進めた。さっさと帰って風呂にでも入るか。

ポケットから鍵を出し、玄関を開ける。

「・・・さみっ」
どうやらクーラーをつけっぱなしで行ったらしく、うっすらと浮かんだ汗が一気に冷やされ、身震いをした。テーブルの上に放り出されていたリモコンをつかんで、クーラーを切る。温度設定は20度になっていた。
すっかり汗が引いてしまった。
けれど風呂に入ると決めて帰ってきたのに、今更入らないのもなんだか。
ソファーに山積みになっていた洗濯物の中からバスタオルを引き抜き、風呂場に向かった。

コックをひねり、お湯を止める。
バスタオルを取って簡単に水気を拭き取りつつ下着に足を通す。さっぱりしたら、何だか出かける気もしない。別段外に出る用事もない。

寝間着、兼、部屋着のスウェットを被り、バスタオルを首に掛け、風呂場のドアを開いた。

「・・・さみっ」
身震いを一つして眉をひそめた。消したはずのクーラーがついている。
・・・幽霊か?
一抹の不安だかなんだかが胸をよぎった瞬間、ソファーの端から足が突き出ているのを見た。不安はどこへやら。一気に血が頭へ上る。たとえ足しか見えなくても、そこにいる奴はただ一人・・・。

「やっ、静ちゃん」

椅子をぶん投げようと構えた瞬間、ソファーに寝転がっていた人物、臨也が満面の笑みを浮かべながら身を起こした。
「てめぇ・・・なんでそこにいるんだ」
「なんでって?静ちゃんに会いたかったから」
「はぁ!?ふざけた理由抜かすんじゃねぇ!だいたい誰の許可を得てそこにいるんだよっ!」
「言ったよ。おじゃましまーすって」
心の中でね。とこっそり付け加え、臨也が笑った。
「目障りだ。失せろ」
「やだよ。今日さ、面白い話を思い出してね。ほら。静ちゃんの子供の頃の話。幽君と喧嘩したときのきっかけ。あれさ、静ちゃんのプリンを幽君が食べちゃって。それで冷蔵庫を投げようとしたんだろ?凄いねー。冷蔵庫。プリン一つで」
「わざわざ昔の話をほじくり返して褒めにでも来たのか?」
もう一度椅子を振りかぶると、臨也が笑いながら手を振った。
「違うよ。違う。俺が来たのはさ、静ちゃんの行動が成る程と思ってさ」
「??」
「プリンの話。ちゃんと名前書いて、俺のくうなって書いたこと。あれさー根本的に言えば犬のマーキングと同じだよね。自分の所有物に名前書く事って」
「犬と同レベルってののしりに来たのか?ああん?さっさと失せろっ!!」

轟音。

破壊音。

椅子が壁に刺さり、しかしそこに臨也はいなかった。

何処へ消えやがった・・・?

「俺もさ、静ちゃん見習おうかと思って」

バチンと首筋に衝撃が走った。痛みの元をつぶそうと背後の臨也につかみかかる。
「あらら。気絶するって書いてあったのに駄目じゃん」
「しねっ」
静雄の拳が臨也の頭のあった場所を切る。
「でもさすがの静ちゃんも最高電圧ならいけるよね」

バギン

がくんと膝から崩れ落ちた静雄を見下ろし、臨也は両手のスタンガンを目の高さまで持ち上げた。
「スタンガン2個、最高電圧。全く君はどんな体をしてるんだか」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ