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□ウソっぱち
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―「トシ」


そう俺の名を呼んだのはうちの局長の近藤さんだった

「最近よく出入りしているが…毎回どこに行ってるんだ?」

「あァ…いや…気分転換?最近疲れたまってるから」

俺がそう答えると近藤さんは、そうか、と返事をした
内心、ホッと息をついた

なぜなら隠し事があるから

気分転換ではないとはいわないが、近藤さんにはますます言いにくい



「いらっしゃい、土方さん」

ここは志村妙の家
志村妙とは近藤さんが愛する相手で…
万事屋んとこのメガネの姉でもある


「いつもすまねぇな」

「いいんですよ、私もいつも暇だから」


空いてる日はお妙さんに会いに行く、最近はこれが普通のようになっていた

これではまるで近藤さんと変わらねぇじゃねぇか…

いや違う、、俺はちゃんと休みの日に来てるんだ
近藤さんみたいに仕事中にストーカーするようなことはしてない


「何か作りましょうか?」

「は!?」

「土方さん、毎日仕事してて、十分に栄養のあるもの食べてなさそうだもの」


そう言うとアンタはふふっと笑うが…俺にとっては笑い事ではない
お妙さんの料理の腕前は、万事屋たちからよく聞く。もちろん悪い話を…

「いや…遠慮しとく…」


そう返事をしたのにも関わらず、お妙さんは台所へ向かっていた


「おいっ!?」

「わかりました、今日はデザートを用意しますね」

「デザートって…」

「貴方、この家から豪華な
ショートケーキでも出てくると思ってるのかしら??」


そんなことはありえない…
と言ったら多分、今、手に
持っている包丁で何かされそうだったので口を封じた

貧相な家だから…とかそういう意味じゃなくて、
彼女の手料理に、真っ白な食べ物が出てくるという
想像がつかなかったのだ
…という言葉も口にしたら殺されそうな予感がしたのでやめた

何やらそれは、真っ黒でもなく、真っ白でもない、真っ赤な果物

「林檎、安売りしてたから買いためていたのよ」


ほっとしたのも束の間、
彼女の包丁使いといったらそれは酷いものだった

「お妙さん、大丈夫か」



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