変奏曲

□出会いと運命
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「んぁ〜…もぉ、ちょいっ」



緑の木々が生い茂る静かな公園に響き渡る、かなり奇妙な独り言。



「いい子だからぁ〜…戻って、おいでっ!!」



池のほとりに膝を着き、腕を長さいっぱいに伸ばして枝を振り回す。
水面に浮かぶ橙色に牡丹の柄が描かれた傘を目掛けて、何度も何度も。

傍から見ればとても異常なこの光景だと思う。
でも止める訳にはいかない。



「やっ、ちょ…だめだめだめっ!!」



枝が微妙に触れたせいで、くるくる回りながら遠ざかっていく傘。
現在手にしている枝ではもう届かないだろう。
枝を変えるにしても、手にしているのがここらで1番長い枝だった。



(あぁ…もう泣きたい)



目尻にうっすらと涙が滲んできた頃、何かの気配を感じて振り返ると…



(……女の子?)



無表情でこちらを見つめる少女がいた。
少女といっても自分と同じくらいの年頃だろうか。
風になびくストレートの髪がとても綺麗だと思った。



(あれ、なんでだろう……あたし達、初対面のはずなのに)



「初めて会った気がしない…」



そんな言葉が思わず零れ落ちた。
自分で言っておきながら、恥ずかしくなってすぐに顔を反らす。



「ご、ごめんなさ「俺も」…え?」



先程まで能面のように無表情だった少女が、淡く微笑んだ。



「俺も、初めて会った気がしない」

「…え」

「ところで、あの傘…取らなくていいの?風でどんどん流されてるけど…」

「ふえっ!?だめだめだめだってばっ!!だってあれは…」

「大事なもの?」

「お祖母ちゃんにもらった形見の日傘…」

「……取ってあげる」



今にも溢れた涙が零れ落ちそうなあたしに優しく微笑んだ少女は、ポンと小さい子供をあやすように頭をなでて、あたしの隣に膝をついた。



「初めて会った気がしないってだけでも、十分何か縁があると思うんだけど…」



鞄から取り出した蒼い傘を目の前に翳して、ゆっくりと柄を伸ばす。



「俺のこの雨傘も、祖母ちゃんの形見なんだ。親近感通り越して…運命感じちゃわない?」



悪戯っぽくウィンクされて、頬が熱くなるのを感じた。
まさか、女の子相手にときめくなんて…

真っ赤になって両頬を押さえるあたしの隣で、少女の雨傘があたしの日傘に届くまであと少しとなっていた。

あぁ、これでお祖母ちゃんの日傘が戻ってくる…と胸を撫で下ろした刹那__



「わっ」

「えっ」バシャッ!!



手を滑らせた少女の片腕が池の中へと消えていく。
とっさに残された片腕を掴んで引っ張るが、足場がぬかるんでいて力が入らない。


少女の腕を掴んでいる腕から、あたしも必然的に池の中へ…



「いやぁ…お祖母ちゃ〜ん!!」バッシャーン!!



大きな水音を立てて池へとダイブ。
ぱっと見たカンジではそんなに深くはなさそうだったのだが、人間が備え持つ浮力を無視してあたし達はゆっくりと池の底へ沈んでいく。



(あたし、死ぬのかな…)



ポジティブなだけが取り柄のあたしだけど、今回ばっかりはそんなことを考えた。

親切な女の子まで巻き込んで、申し訳ないな…
こんなんじゃ、天国行った時にお祖母ちゃんに怒られちゃうかな。

考えることは尽きなかったけれど、息が続かなくなったあたしの意識はそこで静かに途絶えた…





出会いと運命
(あ…)
(む?どうしたであるか、露草)
(なんか倒れてる…けど気のせいだと思いてぇ)
(あれは…女子ではないか!!大変である、助けねばっ!!)
(連れて帰んのかよ…)





〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

名前変換ないですね!!
でも大丈夫、次からはありますから♪

そんでもって、雨女ヒロインがなにやらナンパ男みたいな発言を…
ごめんなさい単なるあたしの趣味でs…(←おい)

By 紗綾

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