紅色の川
□第五話 日曜日
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海に着いた
6月の最初なので
まだ、人はそんなにいないが
気温的には入っても死なないだろう。
少し寒いかもしれないが……
「思ったより綺麗だね」
「そうですね」
山都先輩はまぶしそうに海を見つめた。
「俺、海来たの小学校以来ですよ」
「へぇ」
「先輩はいつですか?」
「高校卒業の春休みかな。最後だと思って」
「ああ、なるほど」
牡丹さんは大胆に砂の上に普通に座った。
「綺麗ですね!」
牡丹さんが嬉しそうに言う。
「私、海大好きなんですよ。昔はよくお父さんと行ったんですよ。最近は自分で暇なとき行ってますけど」
俺は海を眺めた。
潮のにおいが鼻をかすめる
ああ、嫌なこと思い出した。
「あ、入りませんか?」
「え?」
牡丹さんのいきなりな提案に俺は嫌な顔をした。
「ほら、今日けっこう気温高いし人もいないし、足だけですけど。ハンカチで拭けばいいし」
俺はお断りだ
「うん、いいね」
「先輩!」
先輩は腕を組みながら微笑んでいる。
「私は入ろうかな……どうせ足首だけだし。それに、もしも彼女がなんかあったら近くにいた方が良いと思うし」
「じゃあ、私行ってきます!」
「ちょ…」
牡丹さんは笑顔で海に向かって走っていった。
波の近くまで来ると牡丹さんはサンダルを脱ぎはしゃぐように入った。
「じゃあ、私も」
先輩はここで靴と靴下を脱いだ。
「君は行かないの?」
「いえいえ」
俺は首を振りまくる。
「トラウマがありますし」
「トラウマ?」
「はい……昔、友達と海に行ったとき、友達に冗談で海に一分間くらい沈められたことがあるんで……」
「私はそんなことしないよ?」
「分かってますよ。でも、それがなくてもこけたりとか…。とにかく、俺は行きませんよ」
山都先輩は一回息を吐くとゆっくり一人はしゃいでいる牡丹さんのところにいった。
ここ数日で分かったことがある。
牡丹さんは一見大人しそうに見えて、実は積極的だ。
普通、海行って入りたいって一番に言うか?
というか、海にいてきたいって言うか?
というか、名前で呼んでくださいって……
多分、好きな人ができたら
猛アタックでもするんだろうな
チキンの俺には出来ないことだ。