紅色の川

□第五話 日曜日
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二人は楽しそうだな


俺は遠くの方で砂の上に座りながら見ていた。

太陽がまぶしい


あと、暇だな


牡丹さんはワンピースの裾をもって
「冷たい」と言って笑っている。
綺麗だなと改めて思う


山都先輩はズボンを膝まで折って濡れないようにしている。
先輩は何をしてもかっこいいな




牡丹さんは手で水をすくってそれを先輩にかけた。
笑顔がまぶしい

先輩も笑ってる。




笑いあってる二人


一人遠くでその姿を見ている俺



他の人間が二人の姿をみたら










恋人同士に見えるんだろうな…





そして、二人の世界に



俺は




いない














ざわ………



波の音










じゃない……


これは俺の心のなかだけに響いている音




一つの感情



味わったことがある





過去一回だけ







実に5年ぶりか……








ああ、そうか…

こんなにも感覚は麻痺していたのか




それとも
認めたくないから?



すっかり、忘れてた

こんなにも嫌な感じだったんだ




潮風が強いな……

砂が入って



涙が出てくる















その感情の名前は










嫉妬












さぁ、だれに嫉妬してるんだ?



山都先輩?







それとも……

牡丹さん?



考えたくなかった。







そして……





俺は




いつの間にか








立ち上がって







体力もないのに……















走り出した
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