紅色の川
□第4話 帰りたい
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帰りたい
場所は駅
時間は昼
今日
アネモネさんと会うことになった
この間のチャットで
多分、軽はずみな気持ちで約束してしまったんだと思う。
メールアドレスも交換した。
お互い送れることも了解済みだ。
で、今日。
なんで、こんなことになってしまったんだろう。
アネモネさんは俺の中では女の人である。会話からそう思った。
でも、どうだ?
相手がネカマあったら?
これで、ごつい男が来たら逃げる。
まぁ、逃げられないかもしれないが…
俺は今、白いシャツに紺のカーディガン、下がジーパンという格好だ。
それは、アネモネさんも知っている。それを目印にしてくださいと伝えたからな。
やだなー
帰りたい
まぁ、相手が俺のことをどんな風に想像しているのか分からないから、俺も人のことは言えないのだが……
そういえば、アネモネさんは大学生と言っていた。それが本当ならかなり若い女の子だ。女の子か…関田さんみたいだったらいいが……とびっきりの不細工かもしれない……いやいや、俺も自分のことは言えまい。
不細工でも可愛い子でも、とりあえず若い女の子なら大歓迎だ。
俺は一人で来る相手を想像しながら広い心で受けとめる準備をしていた。
すると………
「あの……日光さんですか?」
「はい、そうです。貴方は……?」
「アネモネです」
度肝を抜かれた。
腰を抜かしそうになった。
目の前には女の子
女の子と言うより女性と言った方が正しい。
白いワンピースにジーンズ生地のジャケット。髪の色は黒で肩より少し長い程度。まっすぐなストレートで毎日どんな手入れをしているのか分からないくらいつやつやで綺麗だった。
目の前には女性
とても綺麗な女性
美人というより大和撫子と言った方が似合う人だった。
それが……アネモネさんだった
「どうも……」
美人を相手に目を合わせることもできず、苦笑する。
「なんか……緊張しますね」
「ええ……まぁ…」
中学生のかよ……
アネモネさんはクスッと笑った。
「ごめんなさい、こんなんで……」
俺が目を合わせないのを気にしたのだろうか。
もっと可愛い子を想像していたと思ったらしい。俺は首を振る。
「いえいえ!想像よりずっと綺麗な人が来たから驚いてるだけです。すみません、俺もこんなんで」
「いいえ、日光さんもかっこいいと思いますよ?」
お世辞だ。
じゃなかったら、こんなこと言うわけないのだ。
「喫茶店でも行きますか?」
俺はさりげなく訪ねる。
アネモネさんは穏やかな笑みでうなずいた。
やっぱり、女の人は苦手だ。