過去の日々

□星に願いを
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銀さんが知り合いから笹を貰って来た。
どうやら七夕用に万事屋に飾ったらどうか、と気を利かせてくれたらしい。

僕と神楽ちゃんは願いを書く短冊を色んな人に配って、その笹に飾り付けた…。




【星に願いを】


「つってもよー、1年に一度デート出来る日だからって、他人の願い事まで叶えてくれる、なんてムシの良い話ある訳ねぇよな。」

銀さんが何時もの指定席から僕たちが笹に短冊を飾って行くのを見ながら、ポツリと呟く。

「そんな事分かんないじゃないですか!もしかしたら叶うかもしれませんよ?」
「そうネ!私の酢昆布10年分の願い、絶対叶えさせて貰うネ!」
そういう神楽ちゃんの手にはしっかりと『酢昆布10年分 神楽』と書かれた短冊が握られていた。

「ほら、銀さんも書いて下さいよ!皆も渋々とはいえ書いてくれたんですから。」
僕は銀さんのいる机の前に短冊と筆を置く。

しかし銀さんはノリ気では無いらしく、気ダルげに頬杖をついた。
「願いっつってもねー…。他の奴等はどんな事書いてんだよ?」
そう言いながら立ち上がり、笹に飾り付けられている短冊に目を通していく。

「『日本の夜明けを見る ヅラじゃない、桂だ!』…誰もヅラなんて言ってねぇよ。すっかり口癖だな。」
「誰かさんのせいでね。」
僕は苦笑混じりに頷きつつ、桂さんの隣の短冊を見た。

「『お妙さんと今年こそ結婚できますように 近藤』…あー…近藤さんも相変わらずだな…。」
近藤さんの願いを読み上げた後、神楽ちゃんが僕の服の袖をグイグイと引っ張る。
「新八、その隣に姉御のが飾ってあるネ。『ゴリラが地球から滅亡しますように 妙』
って書いてあるヨ!」
「…この2人の関係も相変わらずだな。」
銀さんも思わず一言。
他にも、
『銀さんとSMプレイが出来ますように さっちゃん』
『マヨネーズ王国が出来ますように 土方』
『土方が苦しみながら死にますように 沖田』
『表紙に出れますように 山崎』
『脱マダオ 長谷川』
『若がゴスロリに目覚めますように 東城』
『お妙ちゃんが一生笑っていますように 九兵衛』
『原稿自動生産機が出来ますように 空知』


…などなど、色んな願いを見ては一言一言コメントしていった。

「ったく、ロクな願い事がねぇな…。で、新八は何て願い事書いたんだ?」
「僕ですか?コレです。」
僕は自分の短冊を指差して銀さんに見せた。

「『お通ちゃんのライブ全制覇出来ますように 新八』…お前、そろそろアイドルオタクから卒業しろよ。」
「良いんです!僕は一生お通ちゃん命で生きて行きますから!」
「ふーん…。」
銀さんはどうでもよさそうに返事をすると机に戻り、筆を手にとった。

そして短冊に願いを書き始める。
僕と神楽ちゃんは銀さんの後ろからその願い事を見た。

『楽して金が手に入りますように 銀時』

「ちょっ、コレはいくらなんでもジャンプの主人公としちゃマズイんじゃ…。」
「向上心の欠片も感じられないアル。」
「別に良いだろー?願い事なんだしぃ。」
僕や神楽ちゃんのツッコミも無視して、銀さんは短冊を一番高い所に飾り付けた。

そして伸びをすると一欠伸。

「さてと…新八ィ、麦茶〜。」
「あ、私も飲みたいアル!」
「自分で持ってきて下さいよ!全く…ちょっと窓開けますよ。」

僕はブツブツ文句を言いながら、窓を開けた。
生ぬるい風が入り込み、神楽ちゃんや銀さんに顰蹙をかったが無視して台所に向かう。

僕・神楽ちゃん・銀さんの短冊が風に揺らめき、それぞれの裏に『ずっと一緒にいられますように』という願い事が書かれているのを知るのは、もう少し先の話…。



―――――――
万事屋ファミリーはずっと一緒にいれば良いと思います、はい。←
 

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