M-garden

□Ol.ビスマルクの落ちこぼれ
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少年は、汗にまみれていた。


細やかな装飾が施された窓枠の外は青空で小鳥も爽やかな鳴き声で朝の一時を和ませてくれていると言うのに少年はただ独り、ベッドの上で荒い呼吸を繰り返している。
まだぼやけたままの視界で窓の外や綺麗に整頓されてある室内を見渡して、ようやく現実との区別をする。

『またあの夢……』


ズキズキと痛む額を紅色の髪ごと抑えて上体を起こす、悪い夢を見た後はなぜか決まって頭痛がするのだ。
しかし今日はそう落ち込んでばかりいられない、少年はベッドのスプリングを利かせて勢い良く立ち上がり、そして深呼吸の後に恥ずかしげもなく叫んだ。


『ッしゃー!今日で脱・遣いッぱしりだぜ!!』





と、万事上手くいくはずもなく。
少年は大柄の身体に不似合いなエプロンを身につけてキッチンに立ち、黙々と野菜に包丁の刃を通していた。

『ハウエル、ピッチ上げなさいよぉ!午後からは優秀なお姉ー様の表彰式があるんだから』

自らを優秀と評する金髪の少女にダイニングから急かされ、ハウエルと呼ばれた少年は規則的に野菜を刻む音を早める。
急かした少女はと言えば退屈を持て余しているといわんばかりに腕組みをして丈の短いスカートから伸びる足を落ち着きなく揺すっているだけだ。






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