M-garden

□Ol.ビスマルクの落ちこぼれ
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“そう思うんなら少しは手伝えよ”
ハウエルは心の奥底で強く叫んだ。実際に口に出来ないのはこの気丈な少女・エリーゼが彼の実姉であるためか、それとも彼女の“騎士”としての実績が自称優秀と言い切れるほどに良いためか。



『アンタは来ないでよ、表彰式』
食器の音が響きわたるだけの朝食の時間、沈黙を破ったのはエリーゼの厳しい一言。
しかし姉から棘々しい言葉を浴びせられるのは日常茶飯事なのでハウエルはさほど大きな反応をみせない。
『行かないよ、俺だってエリーゼの高笑いを聞いていられる程暇じゃないから』

唯一普段と違う点を挙げるとするなら姉のエリーゼではなく珍しく挑発的なハウエルの方だ。
普段の彼ならば素直に姉の言葉に応じるか、聞き流してしまうところ。


『今日の試験、偉い自信があるみたいだけど所詮アンタは「エリちゃーん!そろそろ時間よ!」
勝ち気なエリーゼが自信満々に皮肉ろうとした刹那、ダイニングを出た廊下から外側へはねた赤毛が特徴的な女性がひょっこり顔を出し言葉を遮る。
『やばっ、もうそんな時間!?』
『ほらほら主役が遅刻じゃ格好悪いわよ、それに寝癖付きじゃね?』
ちょうど出掛ける予定だった時刻を指し示す古時計に慌てふためきキラキラと輝く綺麗な鏡台の前で長髪を両耳の上あたりで結ぶエリーゼ。
そんな彼女を急かしたり、宥めたり、寝癖に櫛を通してやるのはハウエルのもう一人の姉、ハンネだ。



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