短編の部屋
□未来のドア
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最近、奇妙な夢を見る。
真っ白な空間が広がっていて、そこに一つのドアがある。
私はそこに近付き、必ずこう言う。
コンコン。
「開いてますか?」
……トイレじゃあるまいし。なんでそんな事を聞くのだろう?
だが、中からは必ずこう返される。
「ええ。開いてますよ」
と。
だが、私は入るのを躊躇してしまう。
何故だか分からない。
私はいつも立ち竦んでしまう。
いつもならここで夢が終わる。
……けど、今日は違った。中からまた声が聞こえる
「恐れないで?あなたはいつでもこの先に行く事が出来るのだから」
私は聞く。
「あなたは一体誰?」
すると、今まで開いた事のなかったドアが少しだけ……ほんの少しだけ開いた。余りにも少し過ぎて中の状況は全然見えないけど。
「私はあなた。あなたは私」
「よく……意味が分からないわ」
「大丈夫。この先に来れば、きっとその意味が分かるから」
さあ……と、そのドアから白い手が差し出される。
どこかで見覚えがあるようなないような、不思議な手。
私はその手を握る。
優しくそっと。
私の左手から伝わる、相手の手の微かな温もり。
「あなたはきっと、理解出来る」
ドアの向こうにいる誰かが繰り返して言う。
そして、私は右手でドアを開けた。
ゆっくりと。
「……ようこそ。あなたの『未来』へ」
……そこで夢は終わった。
目が覚めてみると、外からの光で私は再度目を瞑った。
頭の所にある時計を探り寄せ、時間を見る。
『1月1日AM7時半』と、デジタル時計は表示していた……。