短編の部屋
□9000hitリク説
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平日の帰り道、車のヘッドランプが眩しい街を、私はトボトボと一人歩いていた。
時刻は午後十時過ぎ。街は段々と賑わいが衰えてはきているが、まだ人混みが絶える事はない。
毎日の事ながら、その中をうんざりしながら通る。
若者の群集は、仕事で疲れてヘトヘトになっている私に事など、全くお構いなし。
分かってはいるが、どうしようもなく、やるせなくなってくる。
私は頑張っている筈なのに……そんな気持ちでお腹の中が煮え繰り返る。
駅に入り、改札を抜けると、幾分、静寂になる。
時々、ホームに入る電車を案内するアナウンスと共に、身を切りつける様な風を起こし、去っていく電車が通るくらい。
「……明日は下にスパッツ、履いてこよ」
誰も聴いてなどいない独り言。
……聴かれたら聴かれたで恥ずかしいけど。
目的の電車が到着し、乗り込む。
中では温もりが感じられたが、大衆が乗った電車、どうしても臭いが気になる。
だから私は、いつも入って直ぐ脇の場所を陣取り、少しでも外気に当たろうとする。
臭いを気にするほど、誰かに気を遣う訳でもないのだけれど。