::SK::

□サクラ
1ページ/1ページ


サクラ




ポカポカと
 天気が良すぎる小春日和

桜は咲いて
 山が桃色に見えるのです

修行後の疲れたからだが、休憩を求めるのは仕方ないことだと思います。








「あ、葉じゃん」


そう思って、ハオはS.O.Fのオーバーソウルを解いて、彼のそばへと寄った。




桜の幹に寄りかかり、その影によって得られたちょっとした幸福に身を委ね、スヤスヤと眠る様子に苦笑するなというほうが、酷な話だろう。




「まったく…持ち霊もつけないで…まぁ、葉なら有り得る事か。」



よっこいしょ、とハオは葉の隣に腰を下ろした。


安眠を妨害する訳にはいかないので、少し離れたところに。






それでも、ハオのちょっかいを出したい、という衝動は抑えきれず、とりあえず、そっと葉の顔を覗き込んでみた。






「………」


修行のせいかそれとも他のことの為からか、疲労の色が隠し切れていなかった。



それを思うと、笑顔という表情の効果がどんなに素晴らしいことかがうかがえる。




「…さっきからいるんだろ?出ておいでよ。」



 「やぁ、こんにちは、アンナ」

「気安く名前を呼ばないで。」



アンナはきっ、とハオを睨み付けた。


「そう怒るなよ、ちっちぇヤツだなぁ。ところで、何の用でここに来たの?」


「葉が修行終わってからフラフラどっか行っちゃったから、探しに来てみるとAHO兄貴がいたってだけよ。」


「酷いなぁ、AHOはないでしょ。どっかのバカのウケウリ?」



ハオは軽く、バカにしたように笑うと、立ち上がり、桜を見上げた。


「…似てるわね。」


アンナがボソリ、と柄にもなく呟く。

ハオがそれを聞き逃すはずもなく、その言葉に返事をした。



「そりゃぁ、仮にも双子だしね。」


「アンタ達のことじゃないわよ。」




ハオが「じゃぁ何」と言いたそうな顔でアンナを見ると、彼女はあごで指しながら答えた。



「アンタと、その桜よ。」





「…へぇ、君にしては、珍しい褒め言葉だね。」

ハオが皮肉を込めて、そう言うと、アンナはそれをさらに皮肉った笑いを浮かべた。



「褒めてなんかいないわよ。
むしろ、貶しているんだけど?」



アンナは歩を進め、葉から少し離れて隣、無論、ハオとは反対の方の桜の木に手をあてた。



「このサクラの種類、分かる?」


「…ソメイヨシノだろ。僕が見たのは今生で初めてだったよ。」





「えぇ、改良品種ですもの。」




アンナはハオを小ばかにしたように目を向けた。


「…何が言いたいんだぃ?」



 「…サクラは昔から『潔く散る、儚い花』だと言われているわ。
…江戸時代の武士が自分に当てはめたり、戦時中の軍歌もまた良い例よね。」



その間も花びらはヒラヒラと散っていた。



「らしいね。でも、平安時代辺りでは山桜が主流だったし。」



「新種なんだから当たり前でしょ。」



「はいはい。で?」



ハオが催促すると、アンナは出し抜けに妙な質問を投げかけてきた。



「桜の寿命って知ってる?」



アンナの問いにハオは笑って答えた。


「栄養の整ったものなら裕に50年以上は持つらしいけど」


「じゃぁ、これは?」



これ、とアンナが言ったのは紛れもなく。

ハオも釣られてそれを見た。





 ソメイヨシノ


 「…本当に思うのよ。アンタとこの桜は似ているってね。」


「…どこがだい?」



「ソメイヨシノはせいぜい10〜20年。だけど山桜は違うとアンタも言ったわよね。
 葉とアンタも違う。
 アンタはもう枯れてるけど、葉は今からが咲き誇るの。」





風が、ハオの長い髪を大きく巻き上げ、マントがバサバサと音を発てた。


アンナは挑発しようとばかりな笑みを浮かべている。



「……変なこと言うねぇ、君は」


ふいにS.O.Fを具現化し、その手のひらに飛び乗った。


「逃げるの?」

「別に。まぁ、葉のかわいい寝顔も見れたし、満足して帰ろう、ってとこかな。」




次に花びらを散らせた風はハオがつくったものだった。


「…ん……」

アンナがハオのいた所を睨みつけていると、突然、未だに眠たそうな声が上がった。


「葉、起きたの?」


「…おー。」


葉はダルそうに声を上げると、右手でふらつく頭を抱えた。

「どうしたの?」

「…いや、夢見が悪かっただけなんよ。」


「…夢?」












































暗い闇の世界で自ら輝いているかのように桜だけに色がある。

近寄ると、アナタが桜の養分となるかのように埋まっていた。

―桜が紅く染まるのは、その根元に死体があるからである―











アナタの手が紅く染まるのは、その根元に何があるからなのでしょう?





 






(fin)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ