琥珀

□両手いっぱいの花束を────
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小さなログハウス調の花屋──

入り口上の「フラワーショップ」と言う看板がなければ、入るのを躊躇ってしまいそうな店


カラン──


と、入り口のドアに付いていたベルが鳴る


「開いてる……、すいません!」

中には、小さい花屋とは思えないほどの色とりどりの多彩な花が所狭しと銀の筒状の容器に入れられていた


店内の花に見入っていたアレンは、店の奥から聞こえてきた物音に驚き、物音のした方に視線を向けると店の奥に続く入り口に人影現れる


「……いらっしゃいませ…」

愛想の欠片もない言葉たっだが、店の奥から出てきた人物なら許されるような気がした


整いすぎた容姿と綺麗な漆黒の髪を高い位置で纏め、髪と同色瞳を持った青年


ソコラの雑誌の表紙を飾るモデルより、余程華のある。


(綺麗な人……///)

暫し青年に見惚れていたが、用を一向に言わないアレンに青年が睨んだことによってハッとし


「あ…あの!お供え用の花束をお願いします!!//」

「…分かりました。暫くお待ち下さい」


アレンの注文を受け、必要な花を手に取り始める












花束が出来るまで、店内の花を眺めていたアレンの背に青年が話しかける

「この様な感じで、よろしいですか?」


青年が抱えていた花束を目にし、感嘆した


「綺麗……。父さんも、きっと喜びます」

出来たばかりの花束を受け取る際に、青年の手が目に入った


(あ……)


植物のアクで黒なった指先や爪


棘や枝で傷つけたのか、ては小さな傷


水仕事で手は荒れていた




此処の花達が美しいのは、彼が大切に世話をしているからなのだと気付く







ジッと自分の手を見つめる少女

おそらく荒れ放題の手が、気になったのだろう


スゥ─と、手を隠す


「!ごめんなさい……」


別に謝られることではない


「此方こそ、申し訳ありません。
荒れた手など見ていて、気持ちの良いものでは───」

"ない"と、言い切る前にアレンの言葉が遮る



「違います。
その手は、働き者の綺麗な手です!!」



アレンの言葉に神田は驚く、今まで自分の容姿を「綺麗だと」言われた事は何度となくあった。
しかし、褒められたところで、一度も嬉しいと思ったことはないのに───



荒れ放題の手を綺麗だと言われた時、感じたのは確かに「嬉しい」と言う気持ちだった


「・・・・・・」




此方を見て固まっている姿を見て、しまったと思った。
見ず知らずの人間に「綺麗だ」と言われ、彼はどう思っただろう‐‐‐‐確実に変な奴だと思われているはず



「あッ!//の忘れて下さい!!
変な事言って、すいません」


頭を下げるが、何の反応もない


(どうしよう……)

数時間前の"どうしよう"とは、違う"どうしよう"が頭の中をぐるぐる駆けめぐる


いつまでも、頭を下げている訳にもいかず、そろりと顔を上げると
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