Dream

□拍手お礼SS
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それは放課後、教室で






「すげーいい天気だな」




掃除当番なんて面倒だなぁ、なんて
箒片手に窓の外を眺めていたら突然降って来た言葉



まさに今自分が思ってたことだったから驚いた
隣には、いつの間にかあたしと同じように窓の外を眺める三井くん



きっとさっきのは彼の言葉なんだろうけど・・・・・
彼はまだ外を見ているままだし、彼があたしに話し掛けるわけもない




独り言かな





あたしはまた視線を空に向けた





「おい、聞いてんのかよ」





「へ?!」



今度は顔だけあたしの方を向いてちょっと不機嫌そうな声



「あ、あたし?」


「他に誰がいんだよ」




確かに話し掛けられているとしたらあたししかいないけれど


でも、なんで・・・?!





三井くんといえばすごく有名な人で
クラスでも目立つし、部活でも活躍してて人気もある



そんな人が、どうしてあたしなんかに話し掛けてくるんだろう




「ご、ごめん。うん、いい天気だね」



少し戸惑いながら返事をすると、まぁそんなことはどうでもいいんだけど、と
彼はまた視線を空に向けた




あ、あれ?それだけ?


なんだか拍子抜け・・・・
何かを期待していた自分が少し恥ずかしい





もう行ってもいいかな


気まずい空気に耐えられなくて、掃除を理由にその場を逃げようとしたとき



「あの・・・・えーと、その・・・・」


何か言いたげな彼
あたしに背を向けたままコホンとひとつ咳をして言った






「付き合って欲しいんだけど」








彼の口から発せられた言葉はあまりにも唐突で驚きを隠せない




付き合う・・・・?
付き合うって・・・・・・・・

まさかね、そんなわけないもんね



“付き合う”の意味を精一杯考えて、答えを導いた




「・・・・えーと、何に・・・・?」




本当は真っ先に違う方の意味が思い浮かんだのだけれど
そんなこと、あるはずないから





「・・・・・・は??!」


あたしの答えに彼は驚いたようで、勢い良く振り向いた



「えっと、だから・・・・何に付き合えば・・・・いいの?」





下を向きながら言うのが精一杯


まっすぐな彼の視線がはずかしくて
とてもじゃないけど目を合わせられなかった




ああ、やっぱり苦手
初めて話す人と喋るときって、こんなにも緊張するものだったかなぁ




ドキドキしながら返事を待っていると
意外にも彼の口から出たのはため息だった



「はぁ・・・・。お前、まじで言ってんのかよ?」




なんだかがっかりしたように見える彼の態度




あたし、何か変なこと言ったかな
がっかりさせるようなこと言っちゃったのかな


不安でなんだか泣きそうになる




ずっと見ているだけだった三井くんと言葉を交わせて嬉しいはずなのに・・・・・・




そんなとき、彼が呟いた




「オレの告白を何だと思ってんだよ」




こく・・・はく・・・?




驚いて顔を上げると、相変わらず空を見ている彼の耳が赤い気がする


「え・・・・・?」



もしかして
もしかすると



「お前に告白してんだっての。わかれよな!」



振り向いた三井くんの顔は赤くて
つられて、あたしの顔もたぶん真っ赤だ





信じられないけれど
冗談を言っている様子には見えなくて


彼の本気が伝わってくる




「で、返事は?」



「え?!」



返事なんてもう決まっているけれど
こんなこと初めてでなんて言っていいかわからない





「あ・・・・あたしで・・・よかったら」



戸惑いながら答えた時の彼の顔




本当に子供みたいに嬉しそうに笑うから
三井くんと一緒にあたしも笑った






fin.
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