Dream

□白い息
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朝、ふと目が覚めた



頭まで被っていた布団から顔だけを出す


ひんやりとした空気が頬を撫でた




時計を見ると、いつもより1時間以上も早い時刻を告げている



普段なら2度寝する態勢に入るのだけど、今日はなんだか目が冴えてしまって




重いからだをゆっくりと起こす




「さむっ……!!」



起き上った瞬間あまりの空気の冷たさに身震いした



そういえば、昨日の天気予報で今年1番の寒気が流れ込んでくるとかなんとか言っていたような気がする

よくわかんないけど、とりあえず寒いんだ




なるべく布団から出ないように、イスに掛かっている上着に手を伸ばした


それを着て、窓際へと歩く


こんなにも寒いのだから、もしかしたら雪でも積もっているんじゃ…?



そんな不安(期待)は黒いコンクリートを見ればあっさり裏切られたのだけど



そんなことよりも、すぐに違うものに目を奪われてしまった




ガチャリと玄関のドアが開いて、階段を軽い足取りで降りてくる、その人物




お隣の寿くんだ




幼馴染でもあり、高校の先輩でもある寿くんはバスケ部で、弱小だったチームをインターハイ出場に導いたすごい選手なのだ(本人談)


そんな寿くんは毎日の朝練を欠かさないらしい


だから寿くんは朝は私よりも早く家を出て、夜は私よりも遅く帰宅する


というわけで、学年も違うから校内でもほとんど会えないために、お隣とはいえ、全然顔を合わせられなかった


こうして近くで寿くんを見るのはいつぶりだろう



冷たそうな両手をこすり合わせ、白い息を吹きかけている姿は見るからに寒そうで


気がつくと窓の鍵を開けていた




「寿くんっ!」



窓を開けるとさらに冷たい風が吹き込んできて、一瞬目をつぶった


私の声に驚いたように振り返った寿くんは、ポケットに手を突っ込んでいつも通りの表情を見せてくれた



「よぉ。どーした?早ぇじゃん」




それはこっちのセリフだよ、と心の中で思ったけど口には出さなかった




「なんか目が覚めちゃって。これから朝練?」

「おう。ジョギングも兼ねてな」

「そっか。頑張ってね!あ、あとコレ…」




机の上にいくつか散らばっていた中の大きめのカイロをひとつ、寿くんに放った



「今日寒いんだって!風邪ひかないようにね!」



もちろん寿くんは上手くキャッチして



「サンキュ!早く入れよ。お前こそ風邪ひくぞ」




と笑った



「寿くんが行くまでだから大丈夫」



そう言って、ひらひらと手を振ると、一度背を向けた寿くんが振り返る




「昼休み、自販機前な」

「え?」

「コレの礼にコーヒーでもおごってやるよ」



カイロをカシャカシャと振りながら言う寿くん


あまりの予想もしてなかった出来事に頭が混乱しそう

だけど、そんな動揺を悟られないように精一杯の返事



「コーヒー飲めないからココアがいいなぁ」



言ってから気がついた

こんなこと言ったら、また…




「まだまだガキだな」




やっぱり寿くんは、笑って私を子ども扱いする


「ガキじゃないもん」



立派な16歳だよ
寿くんと2つしか違わないよ


そんな思いを込めて言ったんだけど


寿くんはもうすでに走り出していて


最後に振り返って笑った



「ガキ扱いされたくなかったらちゃんと寝ぐせ直してから学校来いよ」




「えっ?!」






寿くんの背中が小さくなっていくのを尻目に、慌てて鏡で確認する


すると、それはもう見事に寝ぐせがついていて

すごくすごく恥ずかしかったんだけど、それよりも




寿くんと会う約束がある
それがココアを飲み終わるまでのたった5分に満たない時間でも



そのことが嬉しくて嬉しくて

口元が緩みっぱなし





こんな嬉しいお礼なら、毎日だってカイロ持って見送りするのになぁ


なんて贅沢なことを、寝ぐせを押えながら考えていた





fin.


わわわ;;
めちゃめちゃ久々の更新…になります?
短いし、恋愛要素が少なくてごめんなさい;
そろそろ甘〜いの、書かなきゃダメですね!
(2008.1.5)

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