Dream

□春の始まり恋の終わり
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ねぇ、三井

あたしが好きだって言ったらどうする?


なんてね

そんなこと言わないよ










春の始まり恋の終わり









卒業式も終わり、桜の蕾もちらほらと色づき始め、新たな生活が始まろうとしていた頃
高校3年のクラスで集まろうというメールが送られてきた

卒業間もないのにクラス会をやるのは今回で2度目
1度目は卒業後の打ち上げ、そして今回は地元を離れる人たちの送別会

何かにつけて集まろうとする
別れが名残惜しいのはみんな同じなんだろう
だけど


本当は迷っていたんだ、今日ここに来ることを
永遠の別れじゃないけど、みんなと別れることを自覚するのが嫌で
誰よりも別れたくない人と別れなきゃならないのを自覚するのが嫌で

それでも来てしまったのは三井から『お前も来るだろ?』なんてメールをもらってしまったからだ

あたしとしては『当たり前じゃん!』っていつもみたいに明るく返すしかなかったし、なんといっても会いたい気持ちには逆らえなかったから

笑顔でバイバイなんて言える自信はないけれど
せっかくの会える機会を無駄にすることもできなくて

あたしは今日、三井とは離れた席で笑ってる



「じゃーな三井、帰って来たら連絡しろよ!」

「おう、じゃーな」


三井とは帰る方向が同じで、今日はたまたま二人きり
ちょっと前まで二人でいることが当たり前のように思っていたのにもう既に懐かしい


「じゃあ帰るか」

「うん」


こうして二人並んで歩くのはいつぶりだろう
あの頃と今とじゃ全然気分が違うけどやっぱり三井の隣は心地がいい

あの子もきっとそう思っていることだろう



「引っ越しいつ?」

「もう運んであんだよ、もともと持ってく物も少ねぇし。で、来週にはオレも行く」

「そっか。寂しくなるなぁー!」

「嘘つけ。卒業してから1回も連絡よこさなかったくせによく言うぜ」


嘘なんかじゃない、本当だよ
卒業してからだって何度も携帯で三井の名前を呼び出したけど
何度も途中までメールを打ったけど送信できなかった

これ以上傷つきたくなかったから
幸せそうな二人を見たくなかったからできなかった

はずだった……けど



「いろいろ忙しかったんだもん!4月からは華の女子大生だし」

「そーだな、オレらもう卒業したんだよな。まだ全然実感ねぇけど」

「うん……そだね」


そう答えつつもあたしは実感がわいてきつつある
今日みんなと会うのが久し振りで
そうは言っても2週間くらいなんだけどでも
もう毎日会うことはないんだなぁ、って改めて感じてしまったから


そして今日気づいたことは実はもうひとつあるんだ




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