コウノドリ

□どうか、いい夢を
4ページ/4ページ


「あ………?」



藍、と名前を呼ぼうとして違和感に気づく。
何か…やけに、涼しいというか……



「っ……!」



自分の胸元を見ればパジャマのボタンが3つ外されて、何ならナイトブラも前ホックが取れている。
何だこの状況……!
いや、明らかに後ろにいる奴のせいなのは分かっている。
自分には寝ながら脱ぐような癖はない。

とにかく彼が目を覚ます前に身なりを整えないと……



「んん〜…桜月?」
「っ、……藍?」
「ただいま〜…」



いつも以上に緩い口調なのは寝起きだからか、それともまだ夢の中だからなのか。
マズい、非常にマズい。
とにかくパジャマのボタンだけでも止めてしまえば、こちらのもの…。



「おかえり、藍」
「ん…」



返事をしながらボタンを止めて、身体を反転させる。
時間は夜中の3時。まだまだ眠気には勝てないようで目を閉じたまま、すり寄って来る。

……普段は野生のバカだけど、こういうところは子どもっぽくて可愛いんだよなぁ、としみじみ思う。



「眠……」
「まだ3時だよ、寝てて大丈夫」
「ん〜……ん?」
「うん?」



感触を確かめるように頬をすり寄せたり、私の身体に手を這わせたり……何をしているんだ、この男は。
閉じられていた瞼がゆっくりと開けられ、若干不機嫌そうな表情の藍と視線が絡まる。



「藍…?」
「さっきボタン外したのに何で戻してんの〜」
「……人が寝てるところを襲わないでよ」
「だって可愛い寝顔だったから?
寝てるところがダメなら起きてる今ならいい?」
「明日……むしろ今日も仕事だからご遠慮願います」
「ちぇー」



雑に抱き寄せられて頭頂部を顎でグリグリと刺激される。
地味に痛いやつ。
止めて、と頭突きを食らわせてあげれば、お互いに痛かった。



「ほら、寝るよ」
「え〜?せっかく起きたのに〜」
「いいから寝る!」
「じゃあちゅーしてくれたら寝る」



この面倒臭いスイッチが入った藍は本気で面倒臭い。
私からキスなんてしないと思っていて、わざと言っているのだから。
そちらがそのつもりなら、こちらにも考えがある。
ニヤニヤ笑っている彼の胸倉を掴んで引き寄せて、半ばぶつかるようにキスをした。



「はい、したから寝るよ。おやすみ」
「不意打ちは反則だろ!」
「反則じゃないです、おやすみなさい」



まだ騒いでいる藍は無視して、背中を向けて再度寝る姿勢に入る。
少なくともあと3時間は寝られるはず。
貴重な睡眠時間をこれ以上削られる訳にはいかない。

ウトウトし始めたところで後ろから抱き締められた。



「…桜月」
「何よ……」
「おやすみ」
「ん…おやすみ、藍」



お願い、今は寝かせて。


fin...

_


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ