コウノドリ

□異性間交流会
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「下屋〜!聞いてくれよ!」
「何、朝からうっさいなぁ…」



朝から産科に元気にやって来たのは新生児科の白川先生。
何だかんだ憎まれ口を叩き合いながら仲が良い二人だ。



「昨日、吾郎くんの友達がセッティングした合コン行ってきたんだけどさ」
「はっ?!合コン!?」
「めちゃめちゃ良い人…何つーの、お前と正反対の優しさの塊みたいな人がいたんだけどさ」
「は?」
「同僚に強引に連れて来られたみたいで連絡先聞いたら彼氏いるのでごめんなさいって……!」
「残念でしたー」



合コンか、若いなぁ…なんて二人の話を聞き流しながらカルテを打ち込んでいたら、ちょっと信じがたい単語が聞こえてきた。



「でも、近くの保育園で働いてるって言うし、きっとまた高宮さんに会えるはず!」
「………高宮、さん?」



下屋も同じ反応だった。
だって、下屋も彼女には会ったことがあるから。



「ねぇ、白川。近くの保育園の先生と、合コンしたの?」
「おう、何か吾郎くんの友達が知り合いらしくて」
「………高宮さんって、下の名前、何て言ってた?」
「は?何だよ。確か桜月さんって言ってたかな」



予感的中。
そういえば昨日の夕方、同僚と食事に行ってくる、とメールが入っていた。
そういう時は後で大体これが美味しかった、今度一緒に行きたい、と料理の写真付きでメールが入るのだが、昨日は一切そういうものがなかった。
話が弾んでいるのかな、と思っていたけれど、まさか合コンだったとは……。



「でも本当に雰囲気いい人でさ。彼氏にバレなきゃ連絡先の交換くらいいいでしょ、って周りの子達も言ってたんだけど」
「いや、それはダメでしょ」
「そうなんだよー、『バレるバレないじゃなくて裏切ることになるからしない』って……マジ女神と思って!」
「あぁー……桜月さんらしい……」



止めろ、下屋。何か生温い目でこっちを見るな。
まさか合コンに行くとは思っていなかったけど、強引に連れて行かれたなら仕方がない。

……ダメだ、口元が緩む。
僕、愛されてるんだなぁ、と改めて実感。



「じゃあ、僕帰るね」
「お疲れ様でーす」



何もなかったようだけど、とりあえず帰ったら事情聴取させてもらおうかな。
それくらいは許されるよね。































「おかえりー、サクラ」
「ただいま」



当たり前のように彼女の部屋のドアを開ければ、にこやかに迎え入れてくれる桜月。
部屋の奥へと向かいながら朝ごはんどうする?と尋ねてくる彼女は普段と何ら変わりがない。



「桜月」
「うん?……おっと、」



無性に抱き締めたくなって、彼女の腕を掴まえて抱き寄せれば驚きながらも抱き締め返してくれる。
本当に、可愛い。
ふっと笑みを零せば、腕の中で首を傾げている。



「んー……?」
「桜月、昨日の夕飯美味しかった?」
「えっ、あー……うん、美味しかったよ?
何か、オシャレなバルに連れて行かれた」



隠し事ができない彼女。
何とも分かりやすく挙動がおかしくなる。



「……あの、サクラ?」
「うん?」
「……………その、」
「うん」
「昨日の食事、同僚だけじゃなくて」
「白川先生がいたんでしょ、あと吾郎くんとその友達」
「……聞いたの?」
「まぁ、大体は」



不安そうに見上げてくる桜月。
そんな顔しなくてもいいのに。



「ごめんね?」
「何が?」
「知らなかったとは言え、サクラがいるのに合コンなんて……」
「うーん、まぁ驚きはしたけど……連絡先聞かれても断ったみたいだし、あんまり気にしてないかな」
「……本当に?」



そんなに信用されてないんだろうか。
そこまで心の狭い男ではない、はずなんだけどなぁ。
じっと上目遣いをする彼女が可愛くて、思わずキスを落とした。



「っ、……」
「僕の彼女はどこでも評判が高くて僕も鼻が高いよ」
「……何か言ってた?」
「料理が運ばれて来ると取り分けてくれたって」
「それは……私が食べたかったから」
「飲み物こぼした時に拭くのをすぐ手伝ってくれたとか」
「職業病……?」



そう、彼女の行動に他意はない。
ただ彼女がそうしたかっただけ、気づいただけ。
それでも男の目にはそうは映らないもので。



「白川先生が連絡先、交換したかったって」
「……あぁ、何かそんなこと言われた気がする。しなかったけど」
「それも聞いたよ」
「……サクラ、怒ってる?」
「全然?」
「それならいいんだけど……」



まだ腑に落ちていないらしい。
これで連絡先を交換するとか白川先生の話を延々と聞かされるなら話は別だけれども。
彼女がそういうことをしないのは分かっている。



「桜月」
「うん?なーに?」
「今度、休みの日に病院に遊びにおいでよ」
「えー?」
「白川先生に紹介しようと思って」
「……本気?」



一瞬表情が固まって、すぐに苦笑を浮かべた彼女。
我ながら悪いことを考えているとは思う。
それでも彼女に悪い虫がつくくらいなら、一度顔を見せに来てもらった方がこちらとしても安心。



「まぁ……考えておくよ」
「うん、考えておいてよ」
「はい、じゃあご飯にしましょ」
「あー確かに、お腹すいた」



途中まで用意してくれていた朝食の続きをテーブルに並べてくれる。
今日は休み。二人でゆっくり過ごそう。


*異性間交流会*
(食べたら少し寝るでしょ?)
(うーん……そうさせてもらおうかな)
(じゃあ私は少し仕事しようかな)
(一緒に寝ようよ)
(えぇー……折角の休みなのに)
(折角の休みに仕事するって矛盾してない?)
(……それは言わないお約束)


fin...


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