コウノドリ長編

□九話
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「すみません、お待たせしました…!」
「あ、サクラさん。お仕事お疲れ様でした」



《サンドイッチありがとうございました。
とても美味しかったです。
待ち合わせですが、駅前に18時でお願いします》

と、サクラさんからメールが届いたのはちょうどお昼だった。
彼の分と一緒に用意した自分の分のサンドイッチを食べながら、サクラさんは食べてくれたかな、と考えていたところで、あまりのタイミングの良さに部屋で一人悶えてしまった。


昨日、帰宅してから変に興奮して眠れず思い立ってサンドイッチを作り始めたのが夜中の3時。
我ながら何をしているのだろうと思ったけれど、ちゃんとサクラさんに渡すまでは起きていようと頑張った結果完徹してしまった。
飲み会後に完徹って何がしたかったのか分からないが、受け取ってくれた時の笑顔で全て吹き飛んだ。



「すみません、行きましょうか」
「あの…今日はどちらへ……?」



少し急いでいるようなサクラさんだけれども、今日は一体何処に行くのだろうか。
あぁ、と納得したような表情の後でジャケットの胸ポケットから長方形の紙を取り出した。



「これって……!」
「BABYのライブのチケットを…もらったので良かったらどうかなって」
「え、いいんですか?!だって毎回ソールドアウトで、なかなか取れなくて……」
「サンドイッチのお礼です」



BABYのライブ、チケットは取れたけれど中止となった日。
たっくんこと龍哉くんのお母さんが出産された日以来、なかなかチケットが取れなくて随分足が遠のいていた。
サプライズプレゼントと言ってもいいくらいだ。



「……聞いたことないライブハウス、ですね…?」
「今回はスペシャルライブです」
「…そう、なんですか…?」
「えぇ、なので行きましょう」



何となく引っかかる感じはしたけれど、それよりも久しぶりにBABYのライブに行ける嬉しさが勝ってしまう。
それにしても今日、BABYのライブあったかな…?
最近はライブ告知がある度にチケット争奪戦に参戦していたけれど、今日の日付でライブ告知があった記憶がない。
それでも渡されたチケットには今日の日付でアーティスト名は「BABY」となっている。


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