MIU404

□迅雷
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分駐所の窓から見上げた空は今にも泣き出しそうだった。
まだまだ終わりそうにない報告書、これを早く書き上げないことには24時間の勤務が終わっても帰れない。



「今日はこれからかなり天気崩れるらしいぞ〜」
「え、陣馬さん、マジっすか?傘持って来てねーや」
「それなら降り出す前に報告書終わらせろよ〜」
「志摩ちゃ〜ん…」
「俺は手伝わない」
「ケチ!」



仕方なく手を動かし始めた伊吹。
そんな404のやり取りを見ながら、コーヒーを淹れ直していた陣馬が口を開く。



「伊吹はまたあの彼女が傘持ってきてくれるんじゃないか?
ほれ、何てったっけ、前にコンビニで会った…」
「あぁ、桜月っすか?いや〜…ちょっと今日は無理かな〜」
「コンビニに靴届けてくれるような彼女なら、ここに傘くらい持って来てくれそうな気はするけどな」
「んん〜…雨だけなら可能性はあるけど天気荒れるなら厳しいかな。よし、早く帰ろ」



一つ伸びをして先程よりもスピードを上げてペンを走らせる。
ついさっきまで手が止まっていたとは思えないほどの速さだ。



「それだけ早く書けるならさっさとやれば良かっただろ」
「ごめん、志摩ちゃん。今話してる暇ない」
「っ、コイツマジムカつく……!」



志摩がグッと握り拳を震わせたのも目に入らないくらいに集中力を発揮する伊吹。
志摩の言う通り、早く書けるならさっさと終わらせれば良かっただけの話だが、一筋縄でいかないのが伊吹藍という男。



「マジで早く帰んねーと、なあ…」



伊吹の独り言は誰に拾われるでもなく分駐所の中に静かに消えていった。


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