MIU404

□内緒話
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「………また、飲みって…言うかもう飲んでるのか」



《志摩たちと飲んでる!》
とメールが届いていた。
昔から携帯電話を不携帯なことが多いので、メールが来ていたのに気づいた時にはもう2時間…いや、もうすぐ3時間が過ぎようとしていた。

最近多い気がする。
24時間勤務が終わった後、4機捜班長の陣馬さん(確かナイスミドルなおじ様)と相棒の志摩さん(こちらは二度会ったことがある)と飲みに行く、と連絡が入ることが増えている。

奥多摩の交番に配属される前は、色んなところを転々として飲みニケーションなんてなかったようなので、それに比べれば今のところ溶け込んで……諦められて?いるのか、それなりに仲良くしてもらっている、ように思う。

……最近と言わずとも、元々そこまで大事には扱われてはいない。
相棒からは野犬と言われていたらしいが、犬のように従順に言うことを聞くならどれだけいいか。

それにしても、だ。
もうすぐ日付が変わろうとしている。
今夜も帰りは午前様、なんてふた昔以上も前の曲が頭を過る。
いくら明日は非番とは言ってもそろそろ連絡の一つくらいあってもいいだろう。
日付が変わるまでに連絡がなければ問答無用で締め出すと言ってあるのに、

連絡は絶対するから、と約束したはずなのに。



「………」



悶々としていたらようやく電話が鳴った。



「もしもし、ちょっと今どこにいるの?!」
『あー…すみません、志摩です』
「………え?」
『一緒に飲んでたんですけど潰れちゃって』
「えっ、志摩さん?すみませんっ」
『で、今アパートの前にいるんですけど、部屋がどこかまでは分からなくて』
「すみませんすみません、今行きますから!」
『いや、すっかり寝てるんで部屋まで運びます。部屋だけ教えてもらえれば』
「本当に…申し訳ないです……」



部屋の番号を伝えて電話を切る。
本当にいつもいつも……!
正体無くすほど飲むなって毎回念押してるのに。
流石に部屋の中で待つのは申し訳なくて、部屋の前で待っていればエレベーターから志摩さんに肩を借りて、寧ろ引きずられるようにしてこちらに向かってくるバカの姿。



「すみません、志摩さん……ちょっと、藍!」
「こちらこそ、うちの班長が飲ませ過ぎて……すみません」
「あとは貰いますので……わぁっ」



肩に担ごうとしたら、思っていた以上に踏ん張りの利かないバカの身体の重さに一緒に転びそうになる。
……酒量を考えてくれ、と切実に思う。



「いや、ちょっと厳しいと思うんで……中まで連れて行きましょうか」
「……すみません、助かります」



何から何まで本当に申し訳ない。
そして、もう少し部屋を片付けておけば良かった、と後悔。



「よいしょ、っと……」
「ん〜……桜月〜」
「うっさい、寝てなさい」
「じゃあ…自分はこれで」
「あ、志摩さん!お礼にならないと思いますけどお茶飲んでいってください」
「え、でも…」



おそらく、だけれども志摩さんもそれなりに飲んでいるはず。
そんな中、ここまであのデカいのを運んで来てくれたのだ。
このまま帰すのは申し訳ない。



「せめて酔い覚ましに、ね?」
「……じゃあ、一杯だけ」
「すぐ用意しますね」



ソファに座ってもらうよう伝えて、キッチンへ向かう。
お茶を用意しながら、ふと我に返った。

……何を話せばいいのやら。

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