MIU404

□お迎えわんこ
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「飲み会?」
「うん、大学の友達が同じゼミの子達に声かけてくれて」
「そっかそっか、たまにはいいんじゃね?」
「……え、いいの?」



当番勤務明け。
帰ってきた藍に今夜、友達と飲むことになったと報告のような相談をしていたら思いの外、軽い返事が返ってきた。
前に友達に誘われて飲みに行ったら実は合コンでした、なんて時はめちゃめちゃ怒ってたのに。
……いや、これは当たり前か。



「だってさ〜、俺は志摩とか陣馬さんとか九ちゃんと飲みに行くけど桜月はそういうのあんまり行かないじゃん?」
「まぁ、そうだね……?」
「だからたまにはいいじゃん?」
「藍……」
「んー?」
「大丈夫?……変なものでも食べた?それとも熱でもある?」



物分かりが良すぎて逆に怖い。
いつもなら誰と行くの、どこで飲むの、何時から何時まで飲んでくるの、いつ帰ってくるの、とうるさいくらいの質問攻めに遭うのに。
心配になって思わずソファに座る藍の隣に座って彼の額に手を当てる。
……うん、熱はない。

こういう態度を取るということは体調が悪いか、誰かに何か言われたか。

誰か、と言っても藍にここまでの影響を与える人物は数少ない。
少し前まではガマさんだけだったけれど、今は頼れる相棒がいる。
4機捜の仲間がいる。



「だって、志摩がさ?」
「……志摩さん?」
「陣馬さんもだけどさ……『あんまり束縛してると愛想尽かされるぞ』って言うから」
「………なるほどね」



そういう助言を素直に聞き入れるようになった辺り、成長したのか4機捜の皆が藍の軸になってきているのか。
どちらにしてもいい傾向だと思う。



「誰がいるか写真撮って送るね?」
「ん」
「二次会誘われても一次会で帰るから」
「……迎えに行く」
「じゃあ終わる前に連絡するよ」



束縛するなと言われても、気になるものは気になるようだし。
私としても無用な心配はかけたくないもので。
にこりと笑いかければ、私の肩に顔を埋めながら強く抱き締めてくる藍。
……愛されてるなぁ、私。
なんて内心笑ったのは内緒にしておこう。







































「乾杯の写真撮ろー!」
「あっ、その写真送って!」
「え、今?」
「今!今!すぐすぐ!」



大学の友達と飲む時は乾杯の写真を撮るのがなぜかお決まりで。
大体、飲み会後にみんなでグループトークのアルバムに写真を入れまくるのが恒例なんだけれども。
今日はちょっとフライングして乾杯の写真だけ先に送ってもらって、そのまま藍に転送。
わちゃわちゃしていて見にくいかもしれないけれど、私含めて男女9人全員が写っている。
当日声かけられたにも関わらず、これだけ集まるのは仲の良い証拠だろうか。
それともみんな暇人なのか。



「これでよし、と……いただきまーす」
「何、彼氏?」
「んー?あ、そうそう。大体はいつものメンツだよーって」
「束縛されちゃってる感じ〜?」
「そんなんじゃないって。心配性なだけ」



束縛とも違う。
どちらかというと変なところで心配性というべきか。
心配されるほどモテる訳でもないのだけれども、と自分で言って少し悲しくはなるが……事実なのでどうしようもない。



「桜月の彼氏って年上だっけ?」
「うん、8個上」
「年上いいなー、落ち着いてそうじゃん。大人うらやましー」
「タメだとやっぱり子どもっぽく感じるよね」
「そう、なんだー……」



落ち着いてる大人…………彼とこれほどかけ離れている言葉もないけれど、わざわざ否定することでもない。
うん、別に皆が勝手に想像してくれるのは構わない。


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