MIU404

□犬も喰わない
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当番勤務明けで帰宅した彼。
食後に少し寝たいと言うので邪魔をしても悪いかと思い、買い物ついでに本屋までやって来た。

一緒に寝ようと誘われもしたが、生憎夜はしっかり睡眠を取っているので朝食後に眠れるほど眠くない。
むしろ寝れるはずがない。
ぐずぐず文句を言っている藍をベッドに押し込めば3分もしない内に寝息が聞こえてきた。
全く手のかかる……。



「さて、と……」



仕事用の本で何冊か欲しいものもあったけれど、その他に少し勉強したいものもあって普段使っている本屋よりも遠いところまで足を伸ばした。
眠っている彼が起きる前に帰るつもりではあるけれど、一応書き置きはしてきたので問題はないはず。
ゆっくりと本を読みたかったのもあるし、前から気になっていたブックカフェまで来てみた。
蔵書の数は多いと聞いていたし、平日の昼間ならばきっと静かに本が読めるはず。
しかも藍がいないとなれば尚の事、集中できる。

目ぼしい本をいくつか手に取って席につく。
仕事の本は家でもいい。
藍には極力見られたくないし、今は仕事の本は後回しにしておこう。































「……あれ、」
「ん……?あ、志摩さん」
「どうも。伊吹は一緒じゃないんですか」
「いつも一緒という訳では……眠いと言っていたので寝かしつけて置いてきました」
「なるほど……あ、すみませんが相席いいですか?」
「え、あぁ、どうぞ」



顔を上げれば平日だというのにいつの間にかほぼ満席状態のカフェ内。
知り合いからの相席の申し出を断る理由もなく、テーブルを占拠していた本や雑誌などを寄せて半分ほどスペースを開ける。
もう一度、すみません、と言ってから手に持っていた本とコーヒーを置いて椅子に座る志摩さん。

こうしてこの人とお茶をするのは二度目だったか。
置かれた本は難しそうな内容のタイトル。
……少しは見習ってほしいものだ、と遠い目になるのが分かる。



「……栄養士、ですか」
「あ、あー……はい。ちょっと勉強してみたいな、と思って」



コーヒーを口に運んだ志摩さんが私が山積みにした本に視線を移した。
栄養学、栄養士、ついでに調理関係の本を読み漁っていた。

栄養士になりたい、という訳ではないけれど最近は料理の楽しさが分かってきたところで。
何より体が資本な仕事の彼を少しでもフォローできれば、と思ったのも事実。
資格が取れれば1番だけれども、調べてみれば栄養士の資格は専門の養成校に入学する必要があるようで、さすがにそこまでの時間はない。
それならば勉強だけでもできればと思って色々と本を集めてみた。



「難しいですねー、やっぱり」
「……伊吹の為ですか?」
「それもありますけど……最近料理が楽しくて。そのついでに栄養バランスとか色々付随したら一石二鳥かな、と思って」
「なるほど」



暫しの沈黙。
共通の話題は藍のことしかないけれど、そればかり話すのも何だかなぁ。
本はまだ読み足りないし、コーヒーも飲み切っていない。
志摩さんも若干持て余し気味のようなので、そっと気づかないフリをして先程まで目を通していた本に視線を落とした。

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