MIU404

□私だけしか知らない
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「ねぇ、伊吹さんって桜月ちゃんの前だとどんな感じなの?」
「どんな感じって……?」



ハムちゃんと久しぶりのランチ。
連絡は取り合っていたけれど、なかなか予定が合わなくて会うのは実に3ヶ月ぶり。
近況報告に始まり、ゆたちゃんや桔梗さんのこと、仕事のこと、ランチの美味しいお店、とにかく色んなことを話した。

そんな中、突然のハムちゃんからの質問。
私の前の藍……?



「え、何……どんなって?」
「この前、職場でそんな話になってね。
彼氏とか旦那さんが二人きりになると甘えてきたり逆に亭主関白っぽくなったりするって言ってて、桜月ちゃんのとこはどうなのかなって思って」
「そういうことね……」



突然何の質問かと思えば……。
二人きりの時と誰かがいる時で藍の違うところ?
大体いつもご機嫌で飄々としていて、感情に流されやすくて。



「何か違うとこある?」
「私が聞いてるんだってば」



笑いながら突っ込んでくれるハムちゃんには申し訳ないけれど、思い当たる節がない。
良くも悪くも表裏のない男。
人前だからといって何か取り繕うタイプでもないし、むしろそんなことができる性格でもない。



「えー……?」
「じゃあ伊吹さんって、いつもあんな感じなの?」
「そうねぇ……あんまり変わらないかも。
強いて言うなら二人の時はスキンシップ多いかな。人前では絶対に嫌だって言ってあるから」
「ふーん……?」
「ハムちゃん……不満そうだね」



食後のコーヒーを飲みながら私の話を聞いていたハムちゃんはどことなく腑に落ちていない表情。
あの表裏のない男に何か期待されても困るし、特段話して楽しいこともない。



「桜月ちゃんと伊吹さんって付き合ってどのくらい?」
「んー……付き合ってからは3年?4年?くらいかな、初めて会ったのは10年前だけど。
こうも付き合いが長いと彼氏っていうよりは家族みたいなもんだよね」
「桜月ちゃん、いいの?!彼女なのに特別扱いされなくて!」
「はっ?」
「皆に平等なのも大事だけど、桜月ちゃんは彼女なんだよ?」
「いや、まぁ……」



特別扱いされていないという訳ではないんだけれども。
ハムちゃんが珍しく迫力ある口調で話している。
何が彼女の逆鱗に触れたのだろう。



「あの、ハムちゃん?」
「そんなに付き合いの長い彼女なのに皆と同じ扱いなんて伊吹さんってばひどいじゃない」
「待って待って、大丈夫だから。確かに藍は博愛主義タイプだけど、ちゃんと彼女扱いされてるから」
「本当に?」
「本当に本当」



私も藍も信用されていないのか、まだ不審がっている様子のハムちゃん。
これは今日、ちゃんと誤解が解けるか心配でならない。


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