MIU404

□雨の日の過ごし方
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「また、雨……」
「ここんとこ晴れねーなぁ。天気予報も当たんねーし」
「……出かけたかったのに」



そう、出かける予定だった。
藍がどこからか貰ってきたという遊園地のチケット。
当番勤務明けの非番の日に行こうと約束していたのに、生憎の雨。

私は雨でも構わないと言ったけれど『風邪ひかせたくないじゃん?』とあまり乗り気でない彼を無理に連れ出すこともできず。



「チケットの期限はまだ先だし、また今度にしよーぜ?」
「んー……」



今日はすっかり出かける気分だったのに。
着ていく服も決めていたし、何なら何にどんな順番で乗るかも考えていた。
それなのに、だ。



「雨嫌い……」



予定は崩れるし、頭痛はするし。
いいことなんて何もない。

唯一の救いは今日、藍が非番で部屋にいることくらい。



「ほらほら〜、そんな顔しなーい。
可愛い顔が台無しだぞ?ま、そういう顔も可愛いけど〜」
「うっさい……」
「ん……?もしかして頭痛い?」
「……少しだけ」



窓際で膝を抱えながら不貞腐れていた私を茶化しに来たのかニヤニヤしながら四つん這いのまま近づいてきた藍に顔を覗き込まれた。
相手にする気力もなくて、端的に言葉を返せば少し心配そうな表情。

いつものことと言えば、いつものこと。
天気の悪い日は頭が痛くなる。天気頭痛というものか。
今日は楽しみがなくなってしまった分、尚の事しんどい。



「それならそんな冷えるとこにいないの」
「…………連れてって」
「お、今日は甘えたモード?いいね〜、そういうのも」



何がそんなに嬉しいのか。
ニコニコした相貌を崩さずに私を抱き上げてソファまで移動する。
恥ずかしいとかは言わない。
だって今日は何だか人肌恋しい。
……そんなことを言った日にはどうなるか分からないので心に留めておくけれど。



「こうやって家でのんびりするのも良いじゃーん?」
「遊園地……」
「そんな行きたかった?」
「だって、藍と行ったことないんだもん」
「んんー?あー、確かにそうかも?」
「二人でお出かけ楽しみだったのに」
「ホンッットにさぁ?」



横抱きのまま藍の膝の間に座らされて。
広い胸板に頭を預けると、その温もりに少しだけ頭痛が和らぐ気がした。
ぽんぽんと頭を撫でられれば心地良さに瞼が落ちてくる。



「桜月のそういうとこ、めちゃめちゃきゅんきゅんする」
「なにそれ」



藍のきゅんきゅんポイントが分からない、と思いながら、ゆっくりと微睡みに意識を溶かした。

次に目を開けた時、私を抱き締めたまま気持ち良さそうに寝息を立てる藍の姿に思わず頬が緩んだのは内緒の話。


*雨の日の過ごし方*
(たまにはこういうのも悪くない)


fin...


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