MIU404

□話し合いは大切です
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「ただいま〜、っと……?」
「あ、おかえりなさい」
「あれ、今日桜月ちゃん休み?」
「そうなんです、今年に入って有給をまったく使ってないことを上司に指摘されまして」
「確かに機捜の時からあんまり使ってるイメージないな〜」
「今、ちょうど急ぎの仕事もないので思いきって今日明日休みにしちゃいました」



有給消化率が課内でダントツに悪いと以前から言われてた。
特段、有給を使ってまで済ませる用事もないし、何かの時にまとめて使うのも悪くない。
そう思っていたけれど、不意に彼の休みに合わせて休みを取るのはどうだろうと思い立って上司に有給を申請したのは先週のこと。
結婚してから休みが合うというのはなかなかなくて。
部署は違えど同じ警察官。
しかも少し前まで同じ部署にいたのだから、彼の仕事の大変さは重々承知している。

それならばどちらかと言えば休みの融通が効く私が彼の休みに合わせた方が効率がいいだろう。



「なんだ、それ知ってたらもっと早く帰って来たのに〜」
「ごめんなさい、申請下りたの昨日の夕方だったので」



有給を使えと言う割には申請を通してくれない上司に若干苛ついたのはここだけの話。
それでも無事にこうして彼の帰りを迎えることができたのだから良しとしよう。



「はい、じゃあただいまのハグ」
「え、」
「あんまりないじゃん?たまには新婚らしいことしよーぜ?」
「え、えーと……おかえり、なさい?」
「ん、ただいま〜」



両腕を広げてニコニコしながら待っている藍さんの腕の中にお邪魔して、背中に腕を回せば抱き締められながら何とも嬉しそうな声が返ってきた。
年上に対して抱く感情ではないとは思うけれど、本当に可愛い人だと胸がほんのり温かくなる。



「お昼ごはん作ってたんですけど食べますか?」
「食べる食べる〜!手洗いしてくる〜!」



いつだったか、彼の相棒が『アイツは野犬だ』なんて言っていたことがあったけれど、確かに今の彼に尻尾があれば千切れんばかりに振っているのだろう。
何とも微笑ましく感じてしまうのは何故だろうか。



「お、焼きそば〜」
「……あ、」
「ん?」
「実家がいつも塩焼きそばで、何も考えずに塩焼きそば買って来ちゃったんですけど大丈夫でした?」
「ぜーんぜん?塩も好き〜。って言うか桜月ちゃんの作ったやつなら何でも好き〜」



こういうことをこともなげに言う人なのは知っている。
けれど結婚したからと言ってもそれに慣れることはなくて、



「恥ずかしい……」
「そういうとこも可愛くて好き〜」
「もう、藍さんっ!」
「ほらほら、食べよ?焼きそば冷めちゃうぜ?」
「うぅ……いただきます」
「それも、」
「、え?」



両手を合わせて挨拶をすれば、頬杖をついた彼が笑いながら合わせた両手を指差した。
手?何の話?



「そうやってちゃんと挨拶すんのもすげー好き。
分駐所で初めて一緒に飯食った時に見て、偉いなーって思ったんだよね〜」
「えぇ……?」



記憶を巡らせるが初めて分駐所で一緒に食事した時のことはさすがに覚えていない。
手を止めてしまった私に箸を持たせて、食べよう食べようと再度促してくる藍さん。
そんなに大したことはしてないのだけれども。

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