MIU404

□どんな君でも
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「ってことがあってさ〜」
「えー?ホントに?九重さん、災難だな〜」
「あ、陣馬さんで思い出した」
「ん?」



あっぶね、忘れてた。
さっき冷蔵庫に入れたのに出し忘れるとこだった。
ん、いい感じに冷えてる。



「これこれ、陣馬さんが桜月に、って」
「陣馬さんが?」
「黒糖梅酒だって〜、前に桔梗隊長んちで飲んだ時に好きだって言ってたから〜って」
「へぇ〜、今度会ったらお礼言わないと」
「ロックがオススメって言ってた」



貰いもんで悪いけど甘いからうちじゃ飲まねぇんだ、って昨日分駐所にわざわざ持って来てくれた。
ロックが一番、と教えてもらったから梅酒の瓶と背の低いコップと氷をたっぷり器に入れて桜月が待つリビングへ。
コップに氷をたくさん入れて梅酒を注ぐ。
とろっとした感じがちょー美味そう。
軽く混ぜて桜月と俺の前に置く。



「じゃあ、改めて乾杯〜」
「陣馬さん、ありがとうございまーす」



軽くグラスを合わせて何度目かの乾杯。
気がつけば空き缶が辺りに結構転がってる。
桜月も弱くないけどこの量は大丈夫か?
あ、梅酒うま。



「あ、甘くて飲みやすい」
「桜月、梅酒好きだもんな〜」
「ふふふ〜……美味しい」



二人とも、あっという間にグラスが空になり、もう一度それぞれのグラスに梅酒を注ぐ。
トロンとした瞳でカラカラとグラスの中で氷を回している桜月。
もしかして、ちょっと酔ってる?
まぁ結構飲んでるし、当たり前か。



「美味しいねぇ〜……?」
「お、もう一杯いっとく?」



甘くて飲みやすいからか、グラスがもう空。
差し出されたコップにもう一度、梅酒を注いで気づいた。
……アルコール度数20%?
あれ、結構強くない?
俺が飲むなら別にいいけど、桜月がいつも飲むのは缶のチューハイだし、梅酒ももう少し度数の低いやつ。
しかもこんなハイペースで飲まない。



「桜月?大丈夫?」
「んー……何がー?」
「この梅酒、結構度数強いよ?」
「そうなのー……?見せて?」



グラスを空にしてからつつつ、と俺の隣まで移動してきた桜月が、俺の手にある梅酒の瓶を覗き込む。
あ、めちゃめちゃ酒の匂いがする。
いつもの桜月の匂いと違う。



「あー、ほんとだー?強いねぇ〜」
「もう止めとこっか。後で頭痛くなっちゃうじゃん?」
「えー、やだー。美味しいからおかわりちょーだい?」
「うっ、きゅるきゅる魔人……」



首を傾げながらニコニコ笑ってる桜月のきゅるっと加減に負けて、もう一杯だけね、とグラスに梅酒を注いでやる。
この笑顔に弱いんだよなぁ〜……。
梅酒を注いでもらった桜月は満足そうにグラスを傾けてる。



「ねー、藍ちゃーん」
「んー……?」
「ハグしよ?」
「ッ、ゲホゲホッ、え、何?どした?」
「だってー、帰って来てから藍ちゃんハグしてくれてないよ?私、待ってたのにー」



正座に座り直してから、ん、と両手を広げて待つ桜月。
どうしよ、この子めちゃめちゃ酔ってる。
こんなこと普段なら絶対言わないのに。

……いや、ここは素直に言うこと聞いておこう。
桜月からこんなこと言うのはなかなかない。
ハグしやすいように胡座をかいた膝の上に乗せてやれば、幸せそうにトロンと笑う桜月。
その笑顔だけでノックアウトされそう。



「ん、じゃあ……ぎゅー」
「ふふふー、ぎゅーっ!藍ちゃん、あったかーい」



何、この腕の中にいるきゅるきゅるした生き物。
ホントに桜月?
え、宇宙人に中身入れ替えられてない?
ニコニコしながらめっちゃスリスリしてくんだけど。
めちゃめちゃきゅんきゅんするんだけど。



「藍ちゃーん……」
「ん?」
「藍ちゃんのハグすきー、っていうか藍ちゃんがすきー」



あ、ヤバい。
強烈なアッパーカット喰らった気分。
今の桜月が猫だったらゴロゴロ喉鳴らしてお腹見せてる感じ?
俺、犬派だけどこんな猫なら間違いなくちょー可愛がる。
思わず額にちゅーすれば、ちょっと不満そうな顔で見つめられた。



「ん?」
「やだ」
「なーにが?ちゅー嫌だった?」
「そうじゃないの、ちゃんとこっちにキスして?」



こっち、と指差すのは桜月の柔らかい唇。
あー、もうきゅるきゅるとかきゅんきゅんじゃない。



「可愛すぎ」
「ん……」



指差していた手を握って噛み付くように唇を重ねる。
いつもと違う、アルコールの味のする唇。
俺も酔ったかな、くらくらする。



「ん……藍、ちゃん」
「んー……?」



柔らかい感触をたっぷり味わった後でゆっくり離れれば、息苦しかったのか目に涙を浮かべた桜月がじっと見つめてきた。
その目、ダメだって。
マジで止まんない。
そんなこと考えてたら、首に手を回されて引き寄せられる。



「っ、」
「ふふふ、奪っちゃった〜」



してやったり、と言いたげに笑う桜月。
いつも恥ずかしがって絶対に桜月からキスなんてしてくれないのに。
陣馬さん、ありがと。
こんな桜月が見られるのは陣馬さんのお陰。



「桜月」
「んー?」
「ベッド行こ?もうダメ、俺止まんない」
「ふふふー、藍ちゃんのケダモノ〜」



そう言いながら首に抱きついてくる桜月。
それを了解と取って抱き上げれば、身体を預けてくる桜月がどうしようもなく可愛くて。
もう一度、噛み付くようにキスをした。


*どんな君でも愛おしい*
(っふ、苦し……)
(ごめん……ちょっと俺、限界)
(ん、私も……)
(桜月、可愛すぎ)
(ぁ、ばか……)
(ん?ちょっと酔い覚めた?)
(覚め、たっ……)
(ん、じゃあちゃんと覚えてて。さすがに正体無くして襲ったとか思われたくないし)
(そんなこと、しないでしょっ……)


fin...


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