MIU404

□甘い朝
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朝目が覚めると珍しく桜月はまだ寝ていて、規則正しい寝息を立てていた。
寝顔見るのちょー久しぶりかも。
桜月起きるの早いんだよなぁ、なんて考えながら気持ち良さそうに眠る桜月の顔をまじまじと見つめる。
起きてる時にこうやって見ると『減るからあんまり見ないで』って言われる。
何が減るか分かんないけど。



「ん………」



起きたかな、と思って無意識に近づけ過ぎた顔を離したけど、少し身体を動かしてまた寝息を立て始めた。
そういえば昨日仕事が忙しかった、って言ってたから疲れててんのかな。
それなら朝飯は俺が作ろうかな〜、と思うけどもう少し桜月の隣でゴロゴロしていたい気もする。



「………ふ、」



あ、笑った。
ちょー幸せそうじゃーん。
何の夢見てんのかな、俺の夢かな。
………そうだったとしたら起きてから聞いても教えてくれなさそうだけど。





ちょっと暇。
寝顔もきゅるきゅるだけど、やっぱ起きて顔見て欲しいし、そろそろ腹減ってきたから朝飯も一緒に食べたい。

そっと桜月の頬に手を滑らせれば、柔らかくて温かい。
付き合ってからはもう3年、4年?は経ってるのに何でか顔触られるのは恥ずかしいっていう。
頭撫でられるのは好きっぽくて、たぶん気づいてないけどちょー幸せそうな顔するのに。
桜月の肌ってすべすべでずっと触ってたいのに、何でかやだって言われることが多いからなぁ。

頬杖ついて、そんなこと考えながら頬をふにふにしてたら、桜月がまた身動いだ。
起きた?と思ったらまだ寝てる。
しかも俺の手にすりすりしてるし。
何、このきゅるきゅる魔人。
きゅるきゅるが大洪水なんだけど。



「ん……?」
「あ、おはよ」
「藍ちゃん……おはよ」



『藍ちゃん』って呼んでる辺り、ちょっとだけ寝ぼけてる。
このちょっと寝ぼけてる時間もめちゃめちゃ好き。
さっきからちゅーしたくて堪らなくて、でも起きてる時にしたくて我慢してた。
寝起きでぼんやりしてる桜月にキスを落とせば、不思議そうな顔。

めちゃめちゃきゅるっとしてて、もう一回キス。
今度は少し目が覚めたみたい。
目を見開いて今の状況が分かったっぽい。



「え、」
「おはよ。ご飯何にする?」



このままベッドでゴロゴロしていたいけど、今日は服見に行きたいって言ってたし、そろそろ行動開始。
文字通りベッドから飛び起きてキッチンへ向かう。
慌ててベッドを下りた桜月が後ろを追いかけて来るのが背中でも分かる。
何にしようかな、と冷蔵庫を開ければ、ぽすっと背中に柔らかな温もり。



「んー?珍しいじゃん」
「………狡い」
「なーにが?」



腰に回された腕を一度軽く外して向き合うように振り返ると、また抱きついてきた。
寝起きの方が素直だな、と思う。
そんなこと考えていたら、しがみつくように抱きついていた桜月がぽつりと呟いた。
耳に届いた言葉に自分でも頬が緩むのが分かる。
でも、もう一度言ってほしくて、わざと聞こえないフリ。



「んー?どしたー?」
「っ、聞こえてるくせに……!」
「なーにが?ちゃんと顔見て教えて?」



抱きついたままゆっくりと上げられた桜月の顔は想像以上に真っ赤で、堪えきれずに笑ってしまった。
そしたら俺が笑ったことが恥ずかしかったようで『もういい』と離れていこうとする。
それは、ちょっとさせられない。
ぎゅうぎゅうに抱き締めれば、拗ねたような顔の桜月。



「ごめんって、こっち向いて?」
「………ばか」
「ん、ごめん」
「……ん、」



ちゃんと起きてる時にキスして。
そう聞こえた桜月の言葉。考えてることが一緒で嬉しい。
腕の中の桜月に名前を呼ばれて腕の力を少し緩めれば、非難めいた表情で見つめられて。
今日何度目かのキスを、桜月に。


*甘い朝*
(あー………)
(何?)
(もっかいベッド行く?)
(嫌、買い物行きたい)
(だよな〜)
(………………買い物から帰って来てからなら良いよ)
(え、)


fin...


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