MIU404
□代償
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「お疲れ様です、志摩さん」
「あぁ、ありがとう」
「あ……志摩さん」
「ん?」
「401のお二人、まだ戻って来てないんですが……どこにいるかご存知ですか?」
「あぁ、そういえば……どうかした?」
「昨日の夕方、桔梗隊長が密行から戻ったら一機捜本部に来るようにおっしゃっていたので……」
朝のコーヒーを淹れて俺たちに出してくれながら、少し困ったような顔で志摩に話しかけてる桜月ちゃん。
俺には『お疲れ様です、伊吹さん』だけだったのに。
「電話してみるか」
「あ、いえ。そんな……私の方で連絡してみますね」
お二人は報告書頑張ってください、って笑って自分のデスクに戻っていく桜月ちゃん。
何だかなぁ……別に401の話なら俺でもいいじゃん?
そりゃ確かに志摩は頭いいし、むじい話相談してもちゃんと考えてくれそうだけどさ?
「……伊吹、」
「何、」
「お前、見過ぎ」
「何が」
「高宮のこと」
「別にいいじゃん」
「公私混同すんなよ」
そういうならあんま桜月ちゃんと仲良くすんなよ、つーかいつから桜月ちゃんのこと呼び捨てで呼ぶようになったんだよ、って返せば『バカか』って呆れられた。
だって元はと言えば志摩が桜月ちゃんと仲良くするからじゃん?
文句を言おうとしたら401の二人が疲れた顔して分駐所に帰って来た。
「お疲れ様です、遅かったですね」
「あぁ……空き巣の犯人追っかけててな」
「陣馬さん、九重さん、お疲れ様です。
帰って来たばかりで申し訳ないんですが……桔梗隊長が一機捜本部でお呼びです」
「お、了解」
「分かりました」
物凄く申し訳なさそうな顔で陣馬さんと九ちゃんに駆け寄っていった桜月ちゃん。
隊長命令とは言っても確かに密行から帰って来たばかりの二人にまた移動を伝えるのは心苦しいんだろうな。
桜月ちゃん、優し〜。
「だから、見過ぎ」
報告書のバインダーで頭を叩かれた。
結構痛くて頭を押さえながら顔を上げたら心配そうな桜月ちゃんと目が合った。
大丈夫大丈夫、って手を振ったらちょっと怒ったように志摩を見る桜月ちゃん。
「志摩さん、いくら伊吹さんと仲良しでもパワハラになりますよ?」
「勝手に仲良しにするな、別に仲良くはない」
「じゃあ尚更です!」
桜月ちゃんが俺のこと助けようとしてくれてるこの状況。
めちゃめちゃ嬉しいんだけど、志摩と桜月ちゃんの言い合いがめちゃめちゃ仲良しに見えて何かヤだ。
「桜月ちゃん、大丈夫大丈夫〜。
これ、いつものことだから〜」
「ですが……」
「あ、高宮」
「はい、?」
急に何か思い出した志摩が話をぶった切って桜月ちゃんの名前を呼ぶ。
……志摩のそういうとこ、ちょーヤだ。
最近、俺と桜月ちゃんが話してると絶対と言っていいくらいに割って入ってくる。
「今日の飲み、前に行ったとこでいいか?」
「え、」
「前に陣馬さん達と行った、いつものとこ」
「あ、はい」
「ちょいちょいちょいちょい、ちょい待って」
何、何で志摩と桜月ちゃんが飲みに行く約束してんの?
俺聞いてないんだけど。
思わず二人の話に割って入れば二人友、不思議そうな顔して俺を見てる。
その顔、俺がする方。
「二人で飲みに行く、ってこと?」
「ちょっと相談があるって言われたからな」
「何の?!」
「えー、と……」
志摩の言葉を聞いて桜月ちゃんを見れば困ったように笑いながら志摩を見る桜月ちゃん。
何で志摩に助け求めんの?
俺には聞かせられない話?
……そりゃ俺頼りないかもしれないけどさ、話聞くくらいはできるじゃん。
「…………伊吹も来れば?」
「、え」
「志摩さん?」
「三人寄れば文殊の知恵って言うし」
モンジュの知恵って何か分かんねーけど行っていいなら俺も行く。
桜月ちゃんはあたふたしながら志摩と俺を交互に見てるけど今日は気にしないことにする。
だってこれで桜月ちゃんに行ってもいいか聞いてダメって言われたら立ち直れないし。
何より志摩と二人きりとかさせられねーし。
「じゃあ18:00に駅前集合な」
「オッケーイ」
「…………はい」
ちょっと渋い顔してる桜月ちゃんには気づかないフリをして、今度こそ報告書に取りかかった。
早く帰って仮眠取りたいし。
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