パロディ
□看病し隊
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「たっだいま〜」
「パパ、おかえりー!」
「ぱぱ、おかえり」
家の玄関をくぐれば、きゅるっきゅるな天使みたいな二人がお出迎え。
一人ずつ高い高いしてから靴を脱ぐ。
……あれ、一番きゅるきゅるな桜月の声がしない。
抱っこをせがむ二人を両手で抱えながらリビングへ向かう。
「ママは?どした?洗濯物干してる?」
もしかして買い物?とも思ったけれど、子ども二人だけ残して買い物に行くなんて桜月は絶対しない。
ニュースで子どもが巻き込まれた事件を目にする度に悲しそうな顔をする桜月が子どもだけで留守番させるはずがない。
そんなことを考えていたら、右腕に抱っこしてた桃がちょっと困った顔をする。
「あのね、パパ。ママ、お熱あるの」
「え、」
「まま、ねんね」
「パパ帰って来たらベッドで寝るって」
「ちょ……桃、青葉、ごめん」
桃の話を聞いて、慌てて二人を下ろしてリビングに駆けこめば、ソファの上で毛布をかぶってぐったりしている桜月の姿が目に入る。
昨日の夜、電話した時は何ともないって言ってたのに。
頭側に膝をついて顔を覗き込めば、俺が帰って来たことにようやく気づいたようでしんどそうに瞼を開ける桜月。
「桜月?」
「藍、ちゃん……」
額に手を当ててみれば、確かに熱い。
俺の姿を見てから、またしんどそうに眼を閉じる桜月。
いつからこんな状態だったんだろ。
「連絡くれればもっと早く帰って来たのに」
「ごめん……」
桃と青葉が産まれてから、桜月がこんなにぐったりするほど体調悪くしたことはなかったかも。
途切れ途切れな桜月の話と桃の取っ散らかった話をまとめると、
今朝起きた時から何となく調子が悪かった
けど、大したことないと思って風邪の引き始めに飲む漢方飲んで家事してた
青葉が公園行きたいというから朝のうちに公園に行ってきた
三十分だけのつもりが桃も幼稚園が休みで家にいたから楽しくなってなかなか帰れなくて一時間以上遊んできた
帰ってきたら急に寒気に襲われて毛布かぶってた
家事は帰ってきてから片付けるつもりだったから何もしてない、ごめん
ということだった。
変なところで頑張り過ぎる#NAME1##の性格が裏目に出ちゃったみたいだな。
公園連れてくのも家事も帰って来た俺に任せて寝てれば良かったのに。
「まま」
「ママ、大丈夫……?」
ママのこんな姿初めて見るから二人共めちゃめちゃ心配そう。
当たり前だよな、いつも元気で笑顔がきゅるっとしてる桜月しか見てないんだから。
とりあえず桜月を寝室に運んでから寝室の前で不安そうに待ってた桃と青葉の頭に手を乗せて、しゃがんで二人の目線の高さに合わせる。
あー、もう。報告書なんて志摩に任せてもっと早く帰って来れば良かった。
そしたら桜月にしんどい思いもさせなくて済んだし、二人にこんな顔もさせなかったのに。
「パパが帰って来たからもう大丈夫だぞ〜。みんなでママの看病しような」
「かんびょうする」
「パパ、ママご飯食べてない」
「ん、じゃあお粥作るか」
「桃、お手伝いする!」
「あおくんも!」
頼もしいアシスタント二人を引き連れてキッチンへ。
お粥作ろうと思ったけど、まずは朝飯の片付けからだな。
使った食器とかフライパンとか置きっぱなしになってるのは相当体調が悪い証拠。
由布子さんの影響で昔から使った食器そのままにしておくことなんてしなかったもんなぁ。
そんなことを考えながら袖を捲れば、不満そうな桃と青葉が両脇からシャツの裾を引っ張った。
「ん?」
「パパ、ママのお粥作ろうよ」
「まま、おなかぺこぺこ」
「うーん……」
二人の言うことも確かにそうなんだけど。
きっと洗い物してないことも気にしてるだろうしなぁ……いや、でもここで二人のことを無視する訳にも……。
桜月っていつもこんな感じで料理してんの?
つーか料理だけじゃなくて、どんな時でもこんな感じ?
大変じゃね?
「パパー?」
「あ、ごめんごめん。じゃあママのお粥が先な」
お粥って言っても米から炊いてたら時間かかるから冷凍してあるご飯温めて鍋で作るだけだけど。
レンチンしたご飯と水を鍋にぶち込んで、火にかける。
桃に混ぜてもらいながら、今度こそ洗い物。
「ぱぱ」
「ん?青葉、どした?」
「あおくんもやりたい」
「んんー……オッケイ、じゃあお粥に入れる卵割ってもらおうかな〜」
やり方教えてもまだ一人じゃできないから、一緒に卵持ってボウルに割り入れる。
うん、何かこれだけでちょー満足そう。
手を洗わせて、青葉は向こうで遊んでてもらおう。
「パパー、お粥まだー?」
「桃、まだまだだって。飽きたなら向こうで青葉と遊んでていいぞ〜?」
「イヤ。お粥作るもん」
負けず嫌いっつーか天邪鬼っつーか……ホントそういうところも桜月そっくり。
そんなところがちょー可愛い。
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