S 最後の警官
□体調不良
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『今から帰る』とメールをすれば『ごめん、体調悪くて作れないから伊織の分の食べる物買ってきてください』と返信があった。
体調が悪いとは一体…。
まずは帰ることを優先させるべき。
体調不良の理由によって後で買い物に行けばいい、と脇目も振らずに帰路に着いた。
「桜月」
「伊織ー…?おかえりー…」
「…ただいま、体調は」
「絶不調…」
「熱は」
「あー…うん、そういうのじゃないから、大丈夫…毎月のことだし」
「…………そういうことか」
帰宅してみればリビングのソファで腹部を抱えて横になっている桜月が目に入る。
側に寄れば、顔色が悪いのが見て取れる。
額に触れれば熱どころかいつもよりも体温が低いように感じる。
訳を聞いて納得。
「…………この時期だったか?」
「ズレたから余計ひどい」
彼女の生理周期を把握してるって凄いね、と力なく笑うが短い付き合いでもない。
大体の周期は何となく分かる。
「薬飲んだから、もう少ししたらマシになると思うけど…ごめんね」
「謝る必要はない」
「伊織、……ご飯は?」
私はとりあえず大丈夫だから…と言うが、原因がはっきりしたところで体調が悪いことには変わりはない。
気にするな、と頭に手を乗せれば辛そうに溜め息を吐く桜月。
「何か、欲しいものはあるか」
「ん…温かいお味噌汁飲みたい……」
「他は」
「んー……」
「伊織」
「何だ」
「伊織をください」
「………は?」
元々突拍子もないことを言うタイプではあったが、今回は体調不良も相俟ってか尚の事ひどい言い方をしている。
血の気の引いた顔で冗談を言っているようにも見えないが、万が一ということもある。
「ちょっと、ぎゅってしてください」
「……」
本人が至って真面目なのは分かっている。
分かってはいるが、体調が悪いせいか言い方がやけに幼く感じるのは自分の気のせいだろうか。
「全く…したら買い物に行ってくる」
「うん、ごめんね」
「謝らなくていいと言った」
「……ありがと」
ソファに横になっている桜月の隣に無理やり寝転がって抱き締めれば、はぁ…と深い溜め息が聞こえた。
何ができる訳でもない。
ただ少しでも辛さを和らげることができるなら。
「伊織、あったかい」
「…あぁ」
「伊織……買うもの、もう1つ追加してもいい?」
「何だ」
「カイロ。お腹冷えてて辛い」
「……分かった」
ぽんぽんと頭を撫でてやれば、擦り寄ってくる桜月に胸の辺りがじんわりと温かくなるのを感じた。
*体調不良*
(…そろそろ行ってくる)
(………………)
(桜月…?)
(………スー…スー……)
(おい、起き………はぁ)
(スー……スー…)
(全く…)
fin...