コウノドリ

□会えない時間が愛を育むなんていうけれど
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「四宮〜、もう一ヶ月だよ?!仕事忙しいにも限度があるよね!?」
「……お前は人のことを言えるのか」
「そ、れはそうだけど…でもさ、こんなに会わないの初めてで、僕枯れちゃいそう…」
「馬鹿か」



昼休み、屋上で休憩しながら彼女が持たせてくれたおにぎりを頬張る。
この一ヶ月、今までと変わらずほぼ毎日おにぎりを用意してくれている。
メールをすれば返事がある。電話をかければ他愛もない会話もする。

ただ会うことだけが叶わない。
会えるか聞いて断られることが怖くて、ここ一週間ほどは『会える?』の一言も出せずにいた。



「別に、部屋に行けばいいだろ。隣で合鍵も渡されてるんだろ」
「一回部屋に行っていいか聞いたら『今、かつてないほど散らかってるからダメ!来たら嫌いになる!』って言われて……」
「そりゃ、男だね」
「っ、小松さん!そんな、まさか…だって、いつもおにぎり用意してくれてるし…」
「甘いよ、鴻鳥先生。女はそんなの容易くできちゃうんだから」
「小松さんは経験ないでしょうけどね」
「キーッ!シノリン!!」



そんな…まさか……浮気…?!
桜月に限ってそんなこと…でも、この一ヶ月、異常なくらい顔を合わせてくれなかった。
顔を合わせたくない理由があるとすれば…



「でもまぁ、桜月先生に限ってそんなことはないと思うけどねー。
明らかに鴻鳥先生しか見えてませんって感じだし、この前買い物中に会った時も『今日はサクラが頑張って帰ってくるって言ってたから私も頑張って美味しい物作ろうと思って』ってハート飛ばしまくってたし……って、おーい、鴻鳥先生ー?」
「多分聞いてませんよ、あいつ」
「盲目だねぇ」



後ろでそんな会話がなされていたことにも気づかず、フラフラした頭のまま医局に戻る。
ダメだ、今日こそ会わなければ。
いや、でも、会えば別れ話になるのか?

顔は見たいがこうなると会うのが辛い。
連絡しようにも連絡を取った、その先を考えると胸が痛い。

悶々とスマホを抱えたままでいれば、メッセージを受信したようで手の中で小さくスマホが震えた。



《サクラ、今日は仕事何時に終わる?
もし帰って来れそうだったらご飯一緒にどうかな?》



昨日まで…いや、つい先程まで待ち望んでいたメールが届いた。
だが、今は死刑宣告されたような気分だ。

もしかしたら、本当に仕事が忙しかったのかもしれない。
一縷の望みにかけて、今日は定時で帰れるようにするよ、と短い返信をする。
また、すぐに振動があり《じゃあご飯用意しておくね!私の部屋に来てね》とメールが折り返された。


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