コウノドリ

□デート前日
1ページ/2ページ


「四宮先生、すみません。今いいですか?」
「何だ」
「30週の鈴木さんなんですけど…」



何てことない同期と後輩の会話。
そのはずが何故こんなに胸の奥が燻っているのだろうか。

先週出かける約束をしてからというもの、彼女の何気ない会話や行動が気になって仕方がない。
そう、今隣で行われている単なる業務上の会話ですらも。
自分も下屋と同じような会話をするというのに、彼女はこちらを見向きもしない。
勿論自分とて、あからさまに凝視することはないが。


「あー、なるほど…分かりました。次回の健診で話しておきます」
「あぁ」
「ありがとうございます」



そもそも出かける約束をしたのは明日だが彼女とは私用での連絡先は交換していない。
指導医の立場上、如何様にでも調べることはできるが個人情報を勝手に抜き出すのは今のご時世許されることではないし、できれば彼女から直接聞いておきたい。

悶々としているうちに昼になってしまった。
あと半日のうちに連絡先を聞くことができなければ、明日出かけるのはなかったことになりそうだ。



「あれ、桜月?屋上行くの?」
「天気いいし、少し頭リセットしたくて」
「私も行こうかなぁ」
「加江はそこの書類の山を何とかしないといけないでしょ」
「うぅ……思い出させないでよ…」
「じゃ頑張って」



お弁当の包みを持って颯爽と医局を出ていく彼女と一瞬目が合い、軽く会釈をされた。
………このタイミングか。

すぐにでも追いかけたかったが、それもあからさま過ぎると思い、少し気持ちを落ち着けてからそっと医局を離れることにした。

_
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ