コウノドリ

□Jealousy
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昨日は当直明けで今日は休み。久しぶり纏まった時間の休みだ。
彼女は仕事が山積みになっているけれど料理をしたいと言い、夕食と朝食を一緒に摂ることができた。
ごめんね、洗い物だけお願い、と慌ただしく出ていく彼女を見送った後、朝食の片付けをしてピアノに向かうか新しい医学書を読もうと思っていた。

が、せっかくの休みに部屋に篭もってるのは勿体無い、彼女がよく言う台詞が脳内に響いた。
彼女自身も仕事が休みの日に部屋に篭もって持ち帰った仕事をしたり料理をしたりしているが、それでも一日一回は外の空気を吸うようにしていると言っていた。

たまには彼女の言う通りにするのもいい、ピアノも医学書も逃げることはない。
そろそろ汗ばむ陽気になってきた。
ジャケットは置いて、30分ほど歩いてこよう。




























「結局、来るのはここなんだよなぁ…」



足を向けてしまうのは彼女の職場の前。
休みの日に病院に行くよりはマシだが他の行き先もなかなかない。
それに最近は彼女の職場の人にも顔を覚えられたようで不審者扱いされることもなくなった。
それはそれでからかいの的になっているようだが。

だからと言って路上から園内を覗くのはあまりよろしくない。
隣接する公園の木陰にあるベンチに座り、公園内や彼女の職場をぼんやりと眺めていた。



「お外行くよー!」



しばらくして元気な声が聞こえてきた。
つばの広い帽子、首に巻かれたタオル、腕全てを覆ったアームカバー…完全防備で出てきた彼女に口元が緩む。
これからの時期は紫外線対策必須!と言っていたのはこういうことだったのか。
暑そうに見えるが、実はそうでもないらしい。
少し姿が見えなくなったと思ったら、シャワーヘッドのような物を取り付けたホースを引っ張り出してきた。
と思ったら、園庭に水を撒き始めた。
あぁ、打ち水効果を狙ってるのか。
確かに今日は暑くなりそうだからなぁ。



「ほら、濡れちゃうよー」
「キャー!」



水を撒きながら楽しそうに子ども達を追いかける桜月。
楽しそうな子ども達と彼女。
結局、アームカバーを外し、ジャージの裾も捲って半ば水遊びの状態で水撒きをしている姿が目に映る。
捲り上げられた裾から覗く足首が白く眩しい。
時折、水がかかった子どもが楽しそうに声を上げ、彼女もまたそれを見て声を上げて笑う。
本当に楽しそうに笑う彼女に、ちくりと胸が痛んだ。

あの笑顔、僕の前では見たことがないなぁ。
……何を考えているんだ、僕は。
ダメだ、今日は帰ろう。
天気の良さとは裏腹に心の中はどんよりとし始めた。


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