コウノドリ

□日常の一コマ
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「お、はよう、ござい、ますっ……」
「おはよう、桜月。どうしたのそんなに息切らして」
「寝坊しちゃってね……焦ったわ…」
「珍しいね」
「昨日ハードだったからかな、スヌーズも無意識に止めてたみたい」



息を切らして医局に駆け込んできた桜月。
珍しく時間ギリギリだと思えば、これまた珍しく寝坊したらしい。
出勤時間には間に合ったのだからあまり気にすることではないとは思うが、朝からバタバタすると確かに気持ちが落ち着かないのは分かる。



「サクラ、ごめん。申し送り少しだけ待って…」
「大丈夫だよ、昨日の夜はそんなに忙しくなかったから」
「バタバタしたのは昼だけだったか…」



昨日の昼間は緊急搬送が多かった、それに細々としたトラブルで予約外の患者さんも多く昼食を摂る暇もなかったほどだ。
中には女医希望もいて、下屋が休みの昨日は桜月がその患者を一手に引き受けることになってしまう。
定時間際に緊急カイザーもあり、結局彼女が帰ったのは22時を回ったくらいだったか。



「それ、朝ごはん?」
「ん?うん、朝ごはん」
「またそういうの…」
「カップ焼きそばオンリーの鴻鳥先生には言われたくありませーん」
「たまに別なの食べるよ。カレーラーメンとか」
「知ってるけど…似たようなもんじゃない」



10秒チャージ2時間キープが謳い文句のゼリー飲料を口に運ぶ彼女に眉を寄せれば、軽口が返ってくる。
まだ本調子ではないとは思うが、少しはいつもの調子が戻ってきたようだ。



「よし、じゃあ申し送りしようか」
「ん、今日も頑張りまーす」



僕の合図で医局に人が集まる。
今日もまた一日が始まる。



「じゃあ、僕は上がるね。あとはよろしく」
「お疲れー」
「あ、桜月」
「うん?」
「帰ってやっておくことある?」
「あー…洗濯だけお願いしたいかな」
「了解」



仕事の申し送りの後、家での申し送りをすれば小松さんが桜月に後ろから飛びついた。



「ほら、そこー。イチャイチャしない!」
「してません。ただ申し送りしただけですって」
「同棲始めたからって仕事は仕事だからね!」
「当たり前です、公私混同はしません。
ほら、小松さん回診行きますよ」
「はいよー」
「じゃあね、サクラ。また明日」
「うん、お疲れ」



今日は彼女が当直。
付き合い始めたのはいいが、仕事中ですらすれ違いの毎日で、少しでも一緒に過ごす時間を増やしたくて少し前から一緒に暮らし始めた。
四宮や小松さんから仕事でも一緒、家でも一緒で飽きないのかと言われたこともあるが、飽きるどころか長い付き合いでも彼女の知らない面を知ることができて楽しいとすら思う。

さぁ帰ろう。



「……?」



着替えて病院を後にしようとするとスマホが震えた。
呼び戻されたかと思えばメールの着信。



《さっき小松さんがいて言えなかったけど、冷蔵庫に食事入れてある。
昨日作ったやつだから早めに食べてね。》



忙しい毎日でも家事を負担してくれる彼女に感謝を。
帰る前にコンビニで甘い物を買って行こう。
明日の当直明けに食べてもらえるように。



*日常の一コマ*
(おはよう……大丈夫?)
(昨日、満月だったみたいでね…お産ラッシュよ……)
(お疲れ…)
(さっさと申し送りして帰って寝る!)
(うん、冷蔵庫にアイス入れてあるから)
(ありがとー…食べてから寝る)


fin...


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