コウノドリ

□デート当日
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※アクアパー○品川のイメージでご覧くたさい。
(若干の捏造有り)


「はい、チケット」
「あ、おいくらでした?」
「いや、お金もらうのは違うでしょ」
「え、」
「僕から誘ったんだし、一応先輩だし、こういう時は払わせてよ」
「でも…」
「これは先輩命令、ね」



半ば強引にチケットを手渡されて、ニコリと微笑まれてしまえばもう何も言えなくなってしまう。
すみません、と受け取ればどこか満足そうな鴻鳥先生。

後に続いてエントランスをくぐれば色とりどりの魚と光が出迎えてくれた。



「わ…すごい……」
「うん、綺麗だね」
「私、水族館久しぶりで……この時点で楽しみです」
「うん、僕も」



ワクワクする感じを抑えられないまま中に入ればこれまで入ったことのある水族館とは少し趣きの違う、光と音で演出された若干大人向けと言ってもいい雰囲気のある水槽が並んでいた。

ジェリーフィッシュが水槽の光の色に染められてふわふわと揺蕩う姿はどこか幻想的だ。



「可愛い…」
「クラゲ、好き?」
「ふわふわしてる感じ好きです、ずっと見てられる…」



大小様々、形も様々なクラゲ達。
日々の仕事で摩耗されていた心身が少しずつ癒やされていくのが分かる。



「……あ、ごめんなさい。私、一人の世界に入ってました」
「大丈夫、僕も見てて楽しいよ」
「良かった…」
「高宮の表情、くるくる変わって楽しいよ」
「なっ……!」



薄暗くて良かった。
今、絶対に顔が赤くなっている。
クラゲじゃなくて私が見られていた?
いつから?
全然気づかなかった……。



「ほら、向こうに水中トンネルあるみたいだよ」
「……行きます」



昼食前に1回目のイルカのショーがあるらしく、人が多くなってきた。
平日でもこの賑わいでは土日はもっと多いのだろう。
元々身長が高くないうえ、今日はパンプスによる身長のかさ増しもできない為、人の波に埋もれそうになる。



「危ないよ」
「っ、すみません…」



すれ違おうとした人とぶつかりそうになったところを鴻鳥先生に肩を引き寄せられて免れる。
不意に触れた鴻鳥先生の体温と香りにまた心臓が跳ねる。
私のそんな心情を知る由もなく、



「人が多くなったね」
「イルカのショーが、あるみたいで…」
「あぁ、なるほど」



パンフレットを開けば鴻鳥先生が身長差を縮めようと顔を寄せて覗き込んでくる。
自分も人のことは言えないが鴻鳥先生、パーソナルスペース狭い……!
今日はやけに鴻鳥先生の一つ一つの行動に気持ちが振り回されている気がする。
こんな状態で解散するまで心臓がもつのだろうか。



「どうする?ショー見に行く?」
「そう、ですね……今、ショーはパスして、お昼ごはん食べに行く方が空いてるかもしれません。
オンコールなければ午後のショーを見に行くのもありかと」
「じゃあ、そうしよっか」



肩に置かれていた手が離れていったことに少し寂しさを感じたが、すぐ訂正。
手……繋がれた…!?
驚いて鴻鳥先生を見上げれば、何てことないようにいつもの笑顔を返された。



「はぐれないようにね」



自信満々な姿が経験と年齢の差を嫌というほど感じさせた。

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