コウノドリ

□オーバーワーク
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昨夜のオンコールは忙しかった。
四宮先生が当直の日にオンコールがあるということは今夜は忙しいのだろう、と覚悟していたが、想像以上だった。
夜中に呼ばれて仮眠を取る暇もなく朝までLDRを行き来し、立ち会ったお産は5件。
最後に回旋異常で分娩停止となって緊急帝王切開。
満月のバカ野郎、と毒づきたくもなる。

コーヒーを淹れたものの手をつける気力もなく医局のソファでうとうとしていると、日勤の先生達が出勤してきた。



「おはよう、高宮。昨日は大変だったみたいだね」
「、おはようございます…鴻鳥先生、今日ほど満月が嫌いになった日はありません…」
「アハハッ、きっとこれから何回も嫌いになると思うよ」
「…顔、洗って来ます」



睡眠不足でふらつく頭を切り替える為、顔を洗おうとソファから体を起こす。
………この体の重さは、睡眠不足だけではない気がするが気のせいと思っておこう。



「どうかした?」
「いえ、何でもないです」



熱はなさそうだけれども顔を洗ったら診察室で検温して、秘蔵してあるちょっと値段の張る栄養ドリンクを飲んで午前中を乗り切ろう。
熱がないなら気合いで何とかなるはず。
病は気から、とよく言うではないか。



「違う、病じゃない。単に疲れただけ」



半ば自分に言い聞かせるようにしながら顔を洗って診察室へ向かう。

ここが分岐点。
熱があれば素直に申告する。もし風邪だったら患者さん達に移してはいけない。
薬も使えない、免疫力が下がっている状態の妊婦さんが多いのにウイルスを撒き散らす訳にもいかない。
熱がなければ気合いで乗り切る。
昼休みに食事の時間も仮眠に当てれば今日一日何とかなる…はず。
そんなことを考えているうちに脇に挟んだ体温計が計測終了を知らせた。



「……36.9℃…うん、大丈夫大丈夫」



平熱は36.3℃だけれども寝不足なら多少高めでも仕方がない。
さっき医局を出る前に冷蔵庫から出してきたお高い栄養ドリンクを開ける。
これを飲めばきっと元気になる、そう言い聞かせて瓶を一気に煽った。



「まっず………」



これで大丈夫。
午前中は元気いっぱい……のはず。


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