コウノドリ

□異性間交流会
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ようやく週末を迎え、重くなった身体を引きずるようにして更衣室へと向かう。
さて夕飯は何しよう、なんて主婦みたいなことを考えて思い出した。
今日はお隣の彼は当直で不在。
食べてくれる人がいるなら張り合いもあるが、自分の為だけにこの疲れた状態でキッチンに立つというのは今日は遠慮したい。
料理は好きだが年に何回かこういう、キッチンから離れたい日がある。
今日は彼が不在の日で良かった。

……そうなると、だ。
夕飯はどうしようか。
別に外食でもテイクアウトでも、それこそ彼お得意のカップ焼きそばでもいい。
片付けの手間を考えたら外食もありかな、なんて思っていたら更衣室に同僚が入って来た。



「お疲れ様でーす」
「あ、お疲れ様です」
「…………ねぇ、桜月先生?」
「はい?」
「今日ってこの後何か予定あります?」
「いや、特には…ご飯食べてから帰ろうかと思ってたくらいだけど」
「ちょうど良かった!一緒にご飯行きません?」



声をかけてきたのは昨年度一緒にクラスを担任した優花先生。
私と3つしか変わらないのに若くて、言い方は悪いがキャピキャピしてる。
……あぁ、サクラが私に若いというのはこういうことなのだろうか。



「あ、いいね。今日はちょっとキッチン立ちたくなかったし、久しぶりに行こうか」
「じゃあ駅前に19時でお願いしまーす!」
「うん?このまま行くんじゃないの?」
「やぁだ、先生。汗かいたままはダメですよー。じゃ、お先でーす」
「あ、はーい……」



オシャレしてきてくださいねー!と言いながら嵐のように去っていった彼女を見送って、若干の後悔。
このまま食事に行くと思っていたから軽く受けたが、帰ってシャワー浴びてからまた出て来る……若干どころかだいぶ面倒臭い。
でも予定ないって言っちゃったし、約束しちゃったし………仕方がない、同僚との付き合いも大事だ。

諦めて帰宅してシャワー、着替えと化粧をして約束の19時の10分前には駅前に到着していた。



「桜月先生〜!」
「あ、お疲れ様……うん?」
「じゃあ行きましょー!」
「いやいや、ちょっと待って」



時間ピッタリに姿を見せた優花先生の後ろからは彼女の同期で私の同僚でもある深雪先生と、初めましての男性3人。
何、この人達は誰?というのが顔に出てしまっていたのだろう。
同僚2人に脇を押さえられて、向きを変えられる。



「ダメですよ、桜月先生!今日の相手は上玉なんですから!」
「何、何の話?」
「何って合コンですよ、合コン!」
「はぁっ?!」



聞いてないと言えば、言ってないですもん!合コンって言ったら来ないでしょ?と当たり前のことのように返答される。
それはそうなんだけど、私にはサクラという彼氏が………そういえば彼女達にはその話をしていなかった気がする。
クラスが離れてからなかなかゆっくり話す機会なんてなかった。



「はーい、行きましょ行きましょ」
「えっ、ちょっと…」
「乗り気じゃなくてもここまで来たら付き合ってくださいよ!」
「そうですよ、今日の相手はお医者さんなんですから!」
「医者……」



彼の知り合いでなければいい、と本気で願ってしまう。


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