コウノドリ

□glasses
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「もう上がる時間なのにすみません」
「いいよ、帰っても寝るだけだから」



髪を乾かしてスタッフステーションに戻れば、既に全体での申し送りは終わっていて鴻鳥先生から個別に申し送りを受ける。
やっぱり眼鏡だとちょっと見づらいな、今度作り直しに行こうかな。
そんなことを考えていたら隣からやけに熱い視線を感じる。



「……あの、小松さん?」
「んー?」
「そんなに見られると、やりにくいのですが……」
「桜月先生さ、化粧水とか何使ってる?」
「え?」
「めちゃめちゃ綺麗な肌してるから何使ってんのかなーと思って」



化粧水……そんなに高価な物ではなかったはず。
というか私が使ってる化粧品は大体、姉が持って来たもので自分で買ったものはたぶんそんなに多くない。
何ていうものだったか、とボトルの表示を思い返していたらすぐ後ろを通った四宮先生がぽつりと呟いた。



「……化粧品の違いじゃなくて、年齢の違いでしょう」
「おうおう、今何つった?!」
「高宮、外来始まるぞ」
「え、はい。あっ、鴻鳥先生、ありがとうございました!」
「うん、じゃあ僕は上がるからよろしくね」



小松さんの賑やかな声を気にする様子もない四宮先生の後に続いて診察室へと向かう。
あぁ、小松さんごめんなさい。


































「お疲れ様です……、鴻鳥先生?」
「うん、お疲れ様」



午前の外来を終えて医局に戻れば、帰ったはずの先輩の姿。
いや、一度帰ったのか。
昨日着ていた服からは着替えているし、今夜はBABYのライブだからそのままライブハウスへ行ける格好をしている。
当直明けなのにこんな時間にいるのはどうしたのだろう。



「忘れ物ですか?」
「うーん、忘れ物といえば忘れ物かな」
「…………?」
「高宮、ちょっといい?」
「え、あっ、はい」



手招きされて側に行けば、そのまま医局を出て行こうとする鴻鳥先生。
慌てて持っていた医学書類をデスクに置いて、スマホだけ持って後に続く。
話があるのかと思えば、どこへ行くんだろう。



「あの、鴻鳥先生?」
「うん?」
「どうされたんですか?」
「うん、ちょっとね」



何となく歯切れの悪い言い方の彼に首を傾げながら、Yシャツ姿の背中を追いかける。
スタッフステーションを通り過ぎて、関係者以外は立ち入れないスペースへ。
この先は当直室しかないはず……。


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