コウノドリ

□ハロウィンパーティーをご一緒に
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「お疲れ〜」
「あれ、桜月?今日休みだよね」
「休み休み〜。でも今日、小児病棟でハロウィンパーティーするから桜月先生遊びに来て〜、なんて可愛い子達に誘われたら休み返上してでも来るしかないでしょ」
「暇人だな」
「煩いよ、春樹。じゃ行ってくる〜」



朝からやけにご機嫌だと思ったらそういう理由だったのか。
数日前から色々とお菓子を買い込んでいて、一人で食べるには量が多いと思っていたけれど全てはこの為だったようで、小児病棟に向かう彼女の両手には大きな紙袋がぶら下がっている。
暇を見つけては小児病棟に顔を出しているのは以前から知っていた。
僕もそれなりに子ども達の顔を見にいっているけれど、彼女は僕の比でない。



「ハロウィンかぁ……」
「サクラ」
「うん?」
「その顔やめろ」
「え?」
「自覚ないのか、『羨ましい』って顔に書いてあるぞ」
「えぇ……?」



表に出しているつもりはないのに、バレてしまう辺り付き合いの長さを感じる。

彼女が小児病棟で人気があるのが羨ましいのか
彼女とハロウィンパーティーができる小児病棟の子ども達が羨ましいのか

どちらとも言えないけれど、四宮が言うのならば間違いはないんだろう。



「さ……仕事仕事」
「お前はアイツのことになると昔から視野が狭くなるな」
「……煩いよ、四宮」



雑念を振り払う。
そう、もうすぐ昼休みが終わる。
午後の外来が始まる前にやらなければいけないことはたくさんある。







































「ただいま」
「あ、サクラおかえり〜」



小児病棟でのハロウィンパーティーを満喫したらしい彼女の待つ部屋へ帰れば、案の定機嫌のいい、朝よりも楽しげな彼女が迎えてくれた。
ソファに座る彼女の前にはハロウィンパーティーで貰ったらしい折り紙で作られたかぼちゃやオバケ、魔女が広げられている。
あれだけあったお菓子は全て配ってきたらしい。



「ほら、これ見てよ」
「うん?」
「サクラと私で緊急カイザーで取り上げた翼くんが作ってくれたんだよ」
「へぇ、上手になったね」



一つ一つ誰が作ったか、パーティーはどうだったと楽しそうに語る桜月。
隣に座って話を聞いていたが、その笑顔に胸の奥がチリチリする気がした。



「でさ、サクラのピアノがあればもっと良かったかなーって」
「ピアノ?」
「ほら、やっぱり雰囲気で?欲しいかなって?」
「あぁ……なるほど?」



何となく分かるような、分からないような。
クリスマスなら分かるけれどハロウィンの曲なんてあったかな、なんて考えを巡らせていたら、腕を引かれて意識を引き戻された。
彼女と目が合うとにこりと微笑まれた。



「来年はさ、サクラもハロウィンパーティー一緒に行こうよ」
「来年?……二人で抜けたら四宮に怒られないかな」
「じゃあサクラはオンコールで」
「あぁ、そこは僕なんだ」
「当たり前でしょ」



来年のことを言えば鬼が笑う、なんて言うけれど。
これまでもずっと隣にいたし、勿論この先彼女を手放すつもりなんてないけれど、来年も一緒にいることが当然のことのように話をされると、どうにもくすぐったい。



「どうかした?」



彼女の発言に頬を緩めていたら、それに気づいたらしい桜月に顔を覗き込まれた。
昼間感じたモヤモヤも、先程のチリチリした感じもすっかり消え去って案外現金だなと自分でも思う。



「うん、やっぱり桜月が好きだなって思っただけ」
「な、ばかサクラ……!」



ぺち、と僕の腕を叩く彼女は耳まで朱に染まっていて、いつまで経っても反応が初々しい。
願わくばこれから先も君の隣でそんな表情が見られますように。


*ハロウィンパーティーをご一緒に*
(あ、そうだ)
(ん?)
(サクラ、トリック・オア・トリート!)
(うーん……今、お菓子ないから悪戯していいよ)
(えー……悪戯よりお菓子が欲しい)
(桜月はそういうタイプだよね……今からコンビニ行く?)
(やった、サクラの奢りね)


fin...


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