コウノドリ2

□Happy Happy Birthday
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病院のロビーに大きなツリーが置かれて。
街中がイルミネーションで煌めき、人々が浮足立つようなこの時期。
クリスマスの前にある、大切な日を目前にした久しぶりの完全オフ日。
普段なら家事をしたり、医学書片手に論文を読んだりしているけれど。



「うーん……?」



彼に贈るプレゼントを、と思って買い物に出て来た。
……が、そもそも物欲というものがあまり見られない彼への贈り物。
しかも同じ月に誕生日とクリスマスがあるからプレゼントはまとめてでいい、寧ろ一緒にいてくれることがプレゼントだから何もいらないなんて言われてしまって。
彼らしいと言えば彼らしいけれども、それはそれでこちらの気が済まない。

さて、どうしようか。
お付き合いしている人とは言え元々は先輩で、高価なものを送るのは逆に失礼に当たる。
本当は一緒に出かけてウインドウショッピングを楽しみながらプレゼントを決めたいところではあるけれど、一緒に出かけるどころか休みを合わせることすらも難しい。
お産に休みはない、十分に分かっている。
それでもたまに……本当にたまに、恨めしく思ってしまうのはまだ私が産科のプロになりきれていない証拠なんだろう。

ほんの少し自己嫌悪に陥りながら、雑貨屋のディスプレイを流し見する。
去年の誕生日にはカフスボタンとネクタイピンを贈った。
彼が…………BABYがステージに立つ時に一緒にいられるように、と。
今年はどうしようか。
せっかくだから気がねなく普段使いしてもらえるもの。

財布は……デザインと使いやすさ、どちらを重視するかによって変わってくる。
ネクタイ……うーん、仕事中スクラブだし、BABYの時は基本黒いネクタイだから、無しかなぁ。
バッグ、……学会に行く時以外で持っているところをあまり見たことがない。
スマホケース、いや、この前落として割れて変えたばかり。
マフラーと手袋は去年のクリスマスに渡した。



「うぅ…………四宮先生もお兄ちゃんも当てにならなかったからなぁ」



今日、買い物に出る予定で彼をよく知る人と、一般的な意見をもつであろう人に何がいいか相談してみたけれども。
『お前が選んだものなら何でも喜ぶだろ』と素っ気ないが全くもってその通りなお言葉をいただいたし、『誕生日なのか?それなら菫の家に呼んでお祝いを』と危うく変な方向に話が流れていきそうになって慌てて通話を終了させた。
何が悲しくて彼氏の誕生日を兄姉とお祝いしなければならないのか。
…………彼の前で口にしたら二つ返事で了承しそうなので尚更言わないけれど。



「、あ……」



これなら、どうだろう。
普段使いもできそうだし、値が張るものでもない。
候補の一つとして考えておいて良さそう。
あとは、と……目に付いたものを片っ端から品定めしているうちに気づけば日暮れが近い。
今日は夕飯を一緒に食べる約束をしている。
そろそろどうするか絞らなければ。

こうやって誰かにプレゼントを選ぶなんていつぶりだろう。
兄や姉の誕生日はどちらかと一緒に選んで二人から、ということがほとんどだし、同期の誕生日は食堂で食事を奢るくらいでプレゼントを渡す習慣がなかった。
これを渡したら喜んでもらえるだろうかなんて考えながらプレゼント選びをする、この時間すらも愛おしいだなんて。
彼と付き合う前の自分には想像もしなかったこと。

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