短編集

□七夕の夜の夢か現か
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総司は帰り道を急いでいた。
日はもう沈んでしまっていた。



***
「沖田先生、今日はここで泊まって、明日の朝早く帰りましょう。」
共に大阪に来た隊士たちが総司に言った。
「……そうですねぇ。」
「どうかしたんですか??」
何やら考えている総司を不思議に思い、隊士が訪ねた。
「いえ…、今日は七夕ですよね??」
「えっ!?はい、そうですけど。」
予想外の総司の問いかけに驚いた様だった。
「…やっぱり私は帰ります。みなさんは泊まっていって下さい。」
「えぇっ!?何言ってるんですか!?」
この言葉に隊士たちは本当に驚いた。
「だって、土方さん私がいなくて寂しいだろうし。私は早く帰らなくてはなりませんから。」
「副長だって帰るのは明日でイイって…」

そこまで言って、隊士たちは思い出した。
大阪に行く日の朝、総司とセイの会話を…

『神谷さん、私が大阪から帰って来たら七夕やりましょうね。』
総司は満面の笑みを浮かべて言っていた。
『もー、沖田先生!!私は子供ではありません!!』
怒っているような口調だが、セイもすごくうれしそうだった。


「「「沖田先生、早く帰ってあげて下さい!!!!」」」
隊士たちは一斉に言った。
口外に“神谷が待ってます”と含み。
「あはは、土方さんの寂しがり屋は有名なんですねぇ。」
笑って言った。
だが、口外をなんとなく理解した総司の照れ隠しだとみな悟った。
というか、そうであれと願った。
「では、私は帰りますが、みなさんは休んでいって下さい。」
「誰か共を付けた方が」
返事はわかっているが、隊士たちは一応聞いてみた。
「大丈夫ですよ。疲れを少しでも取ってって下さい。では。」
ニッコリ笑って歩きだした。
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