Story
□あずまや様四万打企画小説
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雨が、降っていた。
熱
寒いなぁ、と呟いたら、土方さんに女々しいことをぼやくなと怒られた。
京は夏暑くて冬寒くて、移ろう季節は不意をつくように来襲する。
つい最近まで暑いと扇を仰いでいたのに、降り続く秋雨に、急激に身を縮めて震えなければならないのも、ここでは当たり前の季節の情景だった。
冬物の羽織も出さなきゃならないなとぼんやり思いながら、火鉢の恋しくなる季節ですねぇと言ったら、寒いぐらいでガタガタぬかすなと、また土方さんに怒られてしまった。
多感な豊玉宗匠は、どうやらあはれな風情の景色を眺めながら句作に耽っているようだった。
庭を眺める視線が、いつもより少し滲んで、少し遠い。
要するに邪魔をするなというあの人の照れ隠しなのだ。
副長室を出て、後ろ手に障子を閉めながら、低い雲を眺める。
雨は依然、止む気配はない。
氷雨みたいに凍える寒空に、少しだけ身震いして、私は冷え切った指先を口元に運んだ。
息を吹きかけてこすり合わせるも、束の間の暖は秋雨の中に融けて消えていく。
今夜の巡察も大変そうだ、と思わずひとりごちた。
「沖田先生っ」
声をかけられて振り返ると、頬を上気させた神谷さんがいた。
少し、息が切れている