短編集

□優鬼
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新選組という場所は、生と死を共有する場所。
鬼の住処。

わかっている。

でも、やっぱりわからない。
こういうことがあると――


沖田先生はいつものように刀を振り下ろした。
ただ、いつもと違うのは、同士の首だったということ。

処罰ではなく、苦しまないように。
出来るだけ早く楽にしてやるために。

血に染まった地面を見ている先生が、泣いているように見えたのは、たぶん私だけ。



先生とその隊士は、仲が良かった。

その隊士は先生よりも年上で、近藤局長と同い年だった。
私は2・3言しか話したことはないけど、よく息子の話しをしていた。
たぶん、先生と仲が良かったのは、子供がいたからだと思う。



巡察をしていると、呼子が鳴り響いた。
沖田先生と私が駆けつけた時にはもう隊士は傷だらけだった。

先生は何時ものように、敵を倒していった。
私はその隊士の手当てをするために近づいた。
傷はかなり酷く、その場に法眼がいたとしても無理だったと思う。

隊士は息も絶え絶えに、もうわかっている。と零した。

私は言おうとしました。
ただ、何を言えばいいのかわからなく、口を開いた状態で固まってしまいました。

―何か言うことは??

後ろから声を掛けられました。
その時にやっと、私は斬り合いが終わったことに気づきました。
もちろん声を掛けてきたのは、沖田先生でした。
その後ろには1番隊隊士たちがいました。

―銀、次郎、

顔を歪め、整わない息に翻弄されながら、隊士は最後の言葉を紡ぐ。

―強く、生き、ろ

父親として、息子に宛てた最後の言葉。

胸を締め付けられ、私は唇を強く噛んだ。
そうしてないと、涙が零れてしまいそうで。

先生は小さく、ごめん。と言って刀を振り下ろした。
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